献酬や 晩夏飾りし 夢花火

 ボン

ボン ボン

 ボン

ボン ボン ボン


夜鷹よだかさん、始まったよ!」

「はいはい。お待ちどうさま、間に合ったねェ」


 うちの地元の花火大会は、8月の終わりに行われる。

 この日は珍しく、俺が夜鷹さんの家を訪れている。

 何故なら、夜鷹邸の2階から花火が見られるからだ。我が家は平屋なので、音しか聞こえない。


「仕事帰りに焼き鳥買ってきたよ。それと枝豆。冷凍のやつなんで、まだ凍っているよw」

「俺も、仕事の帰りにスーパー寄ってきました。惣菜コーナーのイカ焼きとお好み焼きです」


草矢そうやさん、祭りのテキ屋を意識してるねェ」

「はいw現地まで買い出しに行くのは、面倒くさいので」


「そんじゃあ、乾杯」

「かんぱーい」


 キンキンに冷やした冷酒を小粋な硝子のぐい呑みで頂く。

 フルーティーだが切れのある口当たりの吟醸酒なので、飲み過ぎに気を付けようと思う。


 冷房の効いた室内で見る花火も良いもので、良く食べ、良く飲み、良く喋り……

 気が付くとクライマックスになっていた。


 連続で打ち上げる大輪の花火は、大音量で家まで揺れた。

 頭の中で、あるフレーズが浮かぶ。



「「日本の夏、金鳥の夏」」


「プッ!」

「ふふ、ははははは!」


 まさかの、発言がシンクロした。

 その後、2人して酒を呷ったのが更に可笑しくて、暫く一緒に馬鹿みたいに笑っていた。


「蚊取り線香でも、焚きますか?」

「いや、こんな閉めきった部屋でですか?」


「煙臭くなって、いやだね」

「確かに」


「クーラー切って、窓開けるかい?」

「絶対、ムリです」


 そう2人で下らない会話して笑いながら、延々と酒を酌み交わすのであった。

 花火はとっくに終わってしまったというのに。

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