後書きのような後日談
「じゃんけん!」
僕が言った。
「ぐりんぴーす」
「はい、もう一回じゃんけん!」
「やったー!ちょこれーと」
「じゃんけん」
今度は
「ぱいなっぷる」
「さあさあだれが一番上に行くのが早いか競争だよー!」
最初は興味なさげだった佐伯も、遠慮していた僕も夏見のペースにのせられていつの間にかジャンケンに夢中になっていた。
「そういえばジャンケンってなんで石と紙とハサミなんだろうね?」
「昔は蛇とカエルとナメクジって三すくみって呼ばれるものだったらしいぞ」
「へー佐伯って物知りー。ねえねえそういえば蛇っていろいろな種類の妖怪がいて、場合によっては神さまだったりうらみをもった霊だったりするのすごいよねー。あれ?どうしたの二人」
僕と佐伯は半目で夏見を見る。
「お前ってやつは本当にこりないよな」
「だって、こわい話って面白いんだもん」
「あはは……」
二人とも変わらない。
それが何よりだと僕は思った。
「遅い」
部屋の前で
「階段で何やってたの」
腕を組んで待っているこのポーズも前と変わらないなと思った。
「行くよ」
矢部さんがガラリとドアを開ける。
一発ではなかなか開かず、ガタガタとドアが鳴った。
「たてつけ悪いな……」
僕たちは、教室に一歩入る。
「うわー」
「なかなか不気味……」
理科準備室。
新校舎三階、北のすみにあるその教室が僕ら
新学期がはじまる前に見てもいいということなので入ってみたけれどこれは想像以上に……。
「わーここ自体がお化けの出そうな教室だね!」
「言わないでよ……」
そう。
マシになったとはいえ僕のこわがりな性格はそう簡単に変わったりしないのだ。
「そんな顔しないでよー。めぐむくんは私たちのヒーローなんだからさ」
僕は苦笑いする。
「そんなカッコいいものじゃないよ」
そのとき、ガタンッとドアが鳴った。
「ひぃっ」
しゃっくりのような情けない声をあげてしまう。
「おーやってるなチビっ子ども」
「
僕たちは驚いた。
矢部さんだけがげ、とイヤな顔をしている。
「なんだよその顔は」
「なにしにきたの?」
「聞いて驚け」
景悟さんは言った。
「俺が怪談倶楽部の
一瞬遅れて僕らは言う。
「ええー!」
「ていうかアンタ、先生じゃないでしょうが」
「だから、秋からこの学校の
軽い調子で景悟さんは言う。
「ウェルカムだよ!」
夏見は明るく言う。
「頭痛してきた……」
矢部さんは見るからに顔をしかめた。
「よろしくお願いします」
佐伯は冷静に言う。
「えーっと僕ちょっとトイレ行ってくるね」
わいわいとさわがしくなってきた教室を出た。
廊下に出ると外を見る。
北側に建つ旧校舎が、すぐに見えた。
中で赤いものが通りすぎた気がした。
どこからかクスクスという笑い声が聞こえる。
彼女はきっと今日もあそこにいるのだ。
僕は教室に戻る。
「あー帰ってきた!」
「遅かったな」
「早く座りなさい。これからミーティングはじめるから」
いつもと変わりない様子のみんなを見て僕は言った。
「みんなありがとう、僕と友だちになってくれて」
やっと言えた。
ひとしきり話し合った後、怪談倶楽部の
今日は一人一つ怪談を話すことになっていた。
「さあ」
みんなが静まりかえる。
「とっておきの怪談をこれから話します」
僕がなぜこんな倶楽部に入ってしまったのか。
それは、単純なことで。
きっとみんながここにいるからだろうなと思う。
怪談倶楽部の日々 錦木 @book2017
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