あたま

あたま

　色々な怪談を見ていると、黒髪というキーワードを見かけることが多々あります。

　ジャパニーズホラーで有名な幽霊も、長い黒髪の場合が多いですね。

　茶髪ではなく、なぜか恐怖をそそるのは長い黒髪。

　もし、道路に黒い毛の塊が落ちていたら。

　具合を悪くした動物やウィッグなどではなく、生首や怨霊の髪をイメージしてしまいます。

　怪談が好きなので、普段からそんなことばかり考えているんです。

　そのせいで、こんな体験をしたのかも知れません。

　普段から夜型の生活をしていて、寝るのは朝になってから。

　午前中、家族やご近所が賑やかにしていても、気付かずに寝ていることが多いです。

　そして起きるのは昼過ぎ。

　でも、その日は、いつもと様子が違っていました。

　普段通りの時間に目を覚ますと、顔のすぐそばに、なにか黒い塊があるんです。

　どう見ても、人間の頭でした。

　ぼさぼさの真っ黒な髪。

　灰色のサバトラ猫を飼っていますが、見間違える色ではありません。

　私の顔から２０センチほど先にあるのは、人間の黒髪です。

　後頭部の丸みも見て取れました。

　寝ている間に、知らない人がベッドまで入って来てしまったのか。

　恐怖し、慌てて飛び起きました。

　すると、その後頭部はズゾゾゾッと、私の顔を目がけて迫って来たんです！

　すぐにその黒髪はほぐれて、超ロングの自分の髪が丸く固まっていただけだとわかりました……。

　髪が背中の下敷きになると絡んでしまうので、枕の上に髪の毛用のスペースが開けてあります。

　そこに軽くまとめていた髪が寝相の悪さで顔の前に流れ、たまたま人の頭のように丸まっていただけでした。

　ずっと髪を伸ばしているので、顔や首にまとわりついてくれば、無意識に枕の上へまとめ直す癖がついています。

　他人の頭に見えたことなど、初めてだったので驚きました。

　話しは変わりますが、うちの年寄りは写真が趣味で、よく家で自分が撮った写真を人に見せています。

　ご近所さんでも知らない人でも家に招き込み、大きく引き伸ばしてパネルにはめた写真を見せるのです。

　未婚の娘が居る家でも構わず『自分の写真を見に来た』と言い張って、誰でも家に入れてしまいます。

　元々そういう人なので私の部屋に鍵は付いていますが、今回の見間違いで、気を付けなくてはと実感しました。

　飼い猫の出入りのためにドアを開けたまま寝てしまうことなど、無いようにしなくては怖いですよね。