第3話 スナイパーJK、異世界転移する その3
わからない、私は率直にそう答えていた。
〈庭〉というのは超人を生み出すべく戦災孤児を集めて、人道? なにそれ美味しいのってレベルの研究を行っていた非合法機関のことだ。
私もあまり詳しく思い出したくないのだが、ブチキレた政府が特殊部隊を送り込んで壊滅させる程度には激ヤバ。
そう聞いてみんなが想像することと、それほど大きくズレてないんじゃないかと思う。
なにせ〈庭〉では訓練中はもちろん、自室以外では常にマスクを身につけることが義務付けられていて、同じ施設で育った私でさえ他の子たちがどんな顔をしてたのかも知らない。
あのなかに真っ白な髪の非人間的な容姿をした子がいたと言われても、ありえると思える程度には過酷な環境だった。
「ま、
だけど
「有名になるような狙撃手は二流だって」
「それは……」
「あんたがスコアを少なく申告してるのを知ったときは正直バカらしいと思ったけどさ」
……思ってたんだ。
「今はあんたの言う通りかもって」
彼女は笑みを浮かべたまま、熱のこもった瞳でまっすぐに私のハートを照準する。
「〈
いざってときは班のみんなを守ってよね」
最後に
「ま、こんなところに現れるとは思えないけどさ」
そのときは私もまだ、フラグやめてよと突っ込む程度には余裕があった。
思い返せば、
この赤い瞳はあまりに非生物的な輝きを放っていて、お人形の目玉に人工の宝石を引っつけたと言われたほうがしっくりくるくらいだ。
おかげで、ひと目見て〈庭〉の出身者とわかってしまう。
ヤバいヤツと敬遠されるほうが普通で、実際、私も含めてあそこにまともな子なんてひとりもいない。
オシャレも恋バナも、みんなが行くチェーン店での注文の仕方も、私に戦場以外での生き方を教えてくれたのは
そんな彼女から受ける信頼はとても心地よく、胸の奥を柔らかな暖かさが満たしていく。
だからだろう。
有名になりながら、なお生き残るような狙撃手は別格だ――
その言葉はついに口にできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます