第6話
「はぁ…どうしたもんかなぁ」
ベッドに背中を預け、天井の板を見ながら呟いた。
真奈との恋人同士という関係を断ち切り、自立を決めたは良いが、友達ができない。話しかけても返答は芳しくなかった。
というか、あの目は何なんだ。蔑むような目。彼らに何かした記憶は無い。どうしてなんだ…?
「話し相手がいない学校って、こんなに寂しいもんなんだなぁ…。」
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久しぶりに、紅葉と話した。いつもと変わらない紅葉。愛してやまない人。
コンビニから出て来るのは分かってた。彼が下校中少し後ろを歩いていたのを知っていたから。偶然を装ってコンビニの前で待ち伏せていたのだ。
計画は順調に進んでる。効果も感じられた。
紅葉と帰りが同じ時間帯になるように意図的に仕組み、復縁を迫る。全て僕の算段通りにコトが進んだ。
「…僕は、紅葉のことなら、何でも分かるんだよ?」
にやけが止まらない。彼の表情を、目を見て分かった。揺らいでいた。彼は今ごろ、独りで寂しさをやり過ごしているのだろう。
彼からメッセージが送られてきたあの日。僕は気付いた。
——紅葉の周りから僕以外を消しちゃえばいいんだって。
「アハハ!僕って天才だなぁ…。」
そうすれば、彼は僕しか見れなくなる。僕以外愛せなくなる。僕だけの、紅葉。誰だって彼には相応しくないんだよ、僕以外…ね。
僕と彼が出会ったのは小学生のころ。幼かった僕は、家が近かったのもあって、毎日彼と遊んでいた。ゲームに外遊び、イタズラもたくさんしたなぁ。そんな日々を送る中、僕はどんどん彼に惹かれていった。将来結婚するのは紅葉だって、そう思って止まなかった。今思い返すと小学生の彼は、僕のことを何とも思っていなかったようだけど。
中学に上がってからは、思春期真っ只中で彼を本気で異性として意識するようになった。中学で陸上部に入り、練習に紅葉が来ていたときは内心、とても嬉しかった。その日から部活中も時間を共にした。
正直、彼が僕を好いてくれていることは分かっていたし、付き合うのは時間の問題だと思っていた。。だけど、告白はされなかった。何度も自分からと思ったけど、やめた。変なプライドが許さなかったから。
高校に上がり、告白された。その日は家で泣いたなあ。想いを伝えられた時は、彼への好きを隠そうと必死だった。
彼が僕に依存してくれている。その状況こそ、僕が欲しかったもの。彼が一方的に愛を向けてくれるという構図。
クールな日々を送ってきた僕の、下らないプライドを守るための。そして、収まることの無い彼への愛から来る、依存されたいという欲、されていることからくる快楽を満たすための。
激しく後悔することになった。その時の状況に甘え、調子に乗り、あんな事を口にしたことを。
僕は最低なことを紅葉にしてしまった。彼を蔑ろにした。
そしてまた、僕は彼を傷付ける。こんな方法しか思い浮かばない僕は最悪な人間だ。だけど、コトが済みさえすれば、彼は僕のモノになる。自信がある。彼を幸せにできる自信が。だから、少しの間だけ辛抱しててほしい。その後は明るい未来が待ってるんだよ。
取り戻さないと。もうプライドは捨てた。僕は、——いや、ワタシは。
計画は、こうだ。私がそれとなく、周りに彼との一幕を口にする。彼を悪者にした存在しない、ただの作り話。影響力はあると自負してる。実際、みんなが彼を見る目は変わっていっている。
「馬鹿だなぁ……ふふっ。」
傷付いた彼の心を私が癒す。私がいないと生きられないようにする。
彼に振られた日から、荒んでしまった心をどうにかしようとして見漁ったインターネットサイト。そこに「弱ってしまった心は間違いに流されやすくなってしまう。」そう書いてあったことを思い出し、そこから着想を得た。一時的にで良い。彼の心に隙間さえ作れれば。
だが、この計画には一人、邪魔な奴がいた。
——芝竜二。紅葉のこの学校唯一、私以外に気の許せる存在だった男。
どうにか彼から奴を遠ざけたい。そう考えながら、学校に着き、朝練に勤しむ彼らを見ながら思いついた。
以前まで私が担っていた役を奴に押し付ける。
部活はその日、辞める決断をした。
全部は紅葉のため。彼のためなら陸上だって辞める、辞めてやる。彼以外いらないから。
作戦は驚ほど上手くいった。私が学校を休んでいた事も相まって、奴は紅葉に近づくことが出来ていない。
ただ、まだ時間は必要。時に任せればいい。時間が全てを良い方向に導いてくれる。その後、私がトドメを刺す。
——————待っててね、紅葉。
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自分のことを男避けだと口にする彼女に別れを切り出してみたら、とっても病んでしまいました。 しろみん @shiromi3001
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