青年たちと未来に続く物語

 むかしむかしあるところに、素質のないお肉としてひとりの魔族が暮らしていました。

 その魔族と同じ時代に、害悪の魔族の血を引く嫌われ者の青年が長い旅をしていました。


 ふたりはひょんなことから出会いを得ます。

 寄り添い合い、分かち合い、共に歩み続けることを祈りながら、甘い契りを結ぶこととなりました。


 幸せになることなど出来ないと思っていたその魔族は、幸せになってはいけないと思っていた魔族と手を取ります。

 豊穣の夜を超えたのち、名前のない国では、そう遠くなく、もうひとつの婚儀が行われました。

 青年たちはすっかりなくてはならない存在として、国の中はまた少し賑やかになったと聞いています。


 時は紡がれます。受け継がれ、混ざり、害悪の魔族の名前は遠いこの未来の中で、物語の中に出るだけとなりました。

 英雄たちや勇者たちが目立つその中に、青年たちの物語が語られることは、きっとありません。

 しかし確かにそこ居て生きていたことは、間違いないのです。




 物語はこれでおしまい。めでたしめでたしと、締めさせていただきましょう。




 ああ、あの荷車ですか?

 子どもたちの格好の遊び場となって、とても人気があったそうですよ。

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素質のなかったおにくの話 瀬野荘也 @s-sew

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