第2話 王様あるある
「さて、ワシから餞別を渡すとしよう」
王はそう言って懐に手を入れて何かを取り出した。
「ほれ、ああああよ、手を出しなさい」
俺は言われるがままに手を出した。
握られた王の手から何かを受け取った。
何か硬い感触がある。コインのような感じだ。
王から手を離された後自分の手に目を落とすと小銭が一枚手のひらに乗っていた。
「ワシから餞別として100ゴールド渡そう。大事に使うと良いぞ」
え、100ゴールド?
「あ、あのこれだけですか?」
思わず俺は言ってしまった。
「あ、いや、もちろん。そんなことはないぞ。おい大臣あれを」
取ってつけたように王は言った。
「ほれ、これもお主に授けよう」
王は俺にそう言って大臣から受け取った長い棒状のものを俺に渡してきた。
それはどう見ても、
「これはなんでしょう。見たところただの木の棒にしか見えないのですが」
思わず言ってしまった。
「その通り、木の棒だ。お主の父が若い頃に戦闘訓練で使っていたものなのだ」
なんでも俺の父さんの名前出せば良いと思ってないか?
というか、訓練で使ってたものを渡すのか。俺、これから魔王討伐の旅に出るんだけど。
疑問が止まらなくなりそうだ。
「は、はあ。木の棒と100ゴールドちょうだいします」
これ以上言っても何も出ないと思って俺は王からのわずかな贈り物を受け取ることにした。
しかしなんとも寂しい餞別だよな。
「ああああよ、どうも不満がある顔をしているがこれでもなんとか捻り出した方だぞ。知らないかもしれんがお主以外にも旅立つ戦士は多くいるのだ。その者たち全てに大金と強力な武器を授けていたらこの国が持たん。分かってくれ」
まあ要は予算がないってことだよな。もうこれ以上何を言っても仕方ない。
俺は一礼をして城を出ることにした。
「あ、そ、そうだ。旅立つ前に町の施設を色々回ることだ。道具屋などはもちろんだが酒場に行けば共に戦ってくれる仲間が見つかるかもしれないぞ。ぜひ活用してくれ」
去り際に王が言った。出す餞別が少ないからか親切心で教えてくれたようだ。
まあそんなのこの世界じゃ常識だよな。
俺は再度一礼をし、今度こそ城を出た。
小銭と木の棒を握りしめて。
王様あるある
〈勇者の旅立ちなのにくれるものがやたらとケチ臭い。理由は色々つけるが結局ケチ〉
これじゃジュースも買えないよ〜。
つづく
ゲーム界のあるあるを超短編で書いてみる ぺんた @gikogiko
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