少年との出会い
次回以降は毎朝9時のみの更新です!( ̄^ ̄ゞ
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学園がお休みの日は、働かないと。
ソフィアの家は、どこにでもある平凡な家だ。
極端に貧しいというわけでもなく、単に平民はある程度の歳になると働いた方が困った時に安心だから。
それに、家の手伝いをせずに学園に通わせてもらっているのだ。
少し特殊な力があったから学園に入れたとはいえ、学び舎は憧れ。好きなことをさせてもらっているからには、大事な家族のために頑張らなきゃ。
だから、ソフィアはお休みの日には必ず働くことにした。
学園に寄せられた依頼をこなし、学園を通して依頼主から報酬をもらう。
いつもは一年生の時に仲良くなった王国騎士団長の息子と一緒に受けるのだが、残念ながら今日は外せない用事で一緒にはいなかった。
最近声をかけてくれる他の人もいるが、皆恐れ多くて一緒に行こうとは言えない。
だから、珍しく。
初めて出会った他の学年の人達と一緒に、新しい採掘場になるであろう洞窟の調査を受けた。
学生の身で受ける以上、依頼の内容も基本的に学生でも問題ないレベルのもの。
ソフィアも、一年生の頃から何度も受け、きっちりと依頼をこなしてきた。
今日も同じ。学園で紹介していた依頼を、ただ受けただけ。
受けただけなのだが───
『ふ、ふざけんなっ!』
『こんなの、聞いてないぞ!?』
急いで他の男達と一緒に洞窟から出るソフィア。
しかし、安堵の余裕もなく……背後から、大量の魔物が追いかけてくる。
(に、逃げないと……ッ!)
けど、どこに?
迎え撃とうにも、洞窟の陰を埋め尽くすほどの魔物の群れにただの学生が勝てるとは思えない。
なんで、ただの調査の依頼のはずなのに、こんなに大量の魔物が?
それに、そもそも自分は誰かを治すことしかでき───
『お、お前が囮になれっ』
ドンッ、と。ソフィアの体が突然押され、思わず尻もちをついてしまう。
「……えっ?」
『ロクに戦えもしない平民なら、時間稼ぎぐらいはできるだろ!』
……分かってはいたことだ。
学園はお金に余裕のある貴族の人間が多く、平民貴族という差別意識が確かに存在している。
中でも、ソフィアは学園側から直々に声をかけられた特待生。
当然、いい顔をされないのは分かっていて。
でも、まさか囮を押し付けられるとは思っていなくて───
(って、座ってる場合じゃない!)
ソフィアは起き上がり、金色の髪についた土をはらうことなく逃げた貴族とは別の方向へ走り始めた。
違うところへ向かう。これは、恐らくソフィアの優しさが勝手に体を動かしたものだろう。
勝手に囮を押し付けられたのに、それでも守ってあげようとする意思。
しかし、遅れて逃げたのはソフィアで、身体能力もどこにでもいる女の子と変わらない。
勝手に逃げた他の生徒とソフィア、一体どちらの方が追いつけそうか?
そんなの、言われなくても分かる───追いかけてくるすべての魔物の視線が、ソフィアの背中に注がれる。
「に、逃げ……」
そう言いかけて、ふと思考が止まる。
逃げたところで、どこに向かえばいいというのだ。
誰かに助けを求めたところで、この量の魔物相手に誰が戦えるというのか。
(一般人を巻き込むわけにはいかない……)
本当はお金を稼いで、家に送って、また明日少しまだ居心地が悪いけど、楽しい学園生活を過ごして。
何気ない休みの、何気ない一日だったはずなのに。
けれど、誰かを巻き込むという選択はできないッ!
(だったら、私が……!)
ソフィアの瞳に涙が浮かぶ。
覚悟は決まった。本当は嫌だけど……やるしかない。
誰かを巻き込むぐらいなら、魔物を引き付けて誰も巻き込まないような場所まで行ってやる。
「少しでも、遠くに……ッ!」
ソフィアは一気に茂みの先を駆け抜け───
「はぁ……この先はうちの屋敷だし、これ見過ごしたら姉さんが危ない目に遭っちゃうよね……」
───ようとした時。
一台の馬車が、整備もされていない場所を通りがかり、そこから一人の少年が姿を見せる。
そして、すぐそこまで迫っていた魔物の群れに大きなパイプのようなものが突き刺さった。
「……えっ?」
ソフィアは思わず足を止めて呆けてしまった。
どうしてこんなところに馬車が通っているのか。どうしてこんなところに少年がいるのか。
何故少年の周りにパイプや剣が浮いているのか───
『ぼ、坊ちゃん……俺はこれからどうすればいいんです?』
御者が恐る恐る、少年に向かって口にする。
「この森を抜けた先で待っててよ。流石に帰られちゃったら、入学初日から遅刻の不良児扱いされちゃう」
『りょ、了解です! ︎︎早く倒してきてくださいね!』
整備されていない道を、御者だけを乗せて馬車が走り出す。
この場には、パイプによって頭を潰された魔物……と、まだまだ押し寄せてくる足音。
少年はソフィアの存在に気がついていないのか、懐から大量に釘が入ったケースを取り出して肩を回した。
「さーて、まさかこんなに数がいるとは思ってなかったけど……今日は周り気にしなくていいし、一人だけだったらなんとかな……えっ?」
しかし、少年が独り言を呟いている最中。
ようやく、視界から少し外れたところに立っているソフィアの存在に気がつき、思わず固まる。
そして───
「な、なんでこんなところに
少年は、酷く驚いたような顔をしていた。
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