二十七 核心

 二月二十五日の事故から四ヶ月余りがすぎた。

 脚のギブスは膝がステンレスのヒンジで動かせるギブスに変り、膝のリハビリがはじまった。

 首に簡易のギブスがある。胸のギブスも簡易な物に変った。とはいえ、両脚ともに上腿と下腿はギブスなので、距離がある移動は今までのように車椅子だ。


「でもね。オシッコの時は、しばらくの間は、あたしに言いなさい。ちゃんとめんどうみてあげるね」

 ルルはベッドにいる俺を見てほほえんでいる。


「そろそろ、独りでするよ。リハビリもしてるから、脚に力が入るようになった・・・」

「まだ踏んばれないから、ふらつくよ。それとも、ウンチみたいに座ってする?

 男子たる者、立ってシッコをしたいだろう!

 明!本当のことを言いなさい!」

 ルルの声は厳しいが目は笑っている。


「立ってシッコしたい・・・」

「よろしい。もう少しあたしが、めんどうをみるよ」

「どうしたの?いつものルルとちがうぞよ」


「将来に向けて、介護保険。介護した分以上に介護してもらうね」

「そんなこと考えなくても、しっかり世話するよ・・・」

 ルルがニコニコしている。今、イロイロつきそって介護しておけば、立場が逆になった時、俺に介護してもらえると言うが、実際はそうではない。ルルのほほえみがそれを物語ってる。


「ルルの考えてることを当てようか?」

「うん・・・」

「俺に触りたい?」

「うふふ・・・」

 ルルの目が笑ってる。興味を持っていたずらするときの目だ。何に興味を持っているかと言えば・・・。


「生物学的には同じ組織なのに、成長したものはちがうんだね・・・。

 それに、かわいい・・・」

「えっ?なんだって?」


「明のかわいいね。おっきくなったり、ちっちゃくなったり・・・」

 俺は返答にこまった。

「ルルの手がやさしいからだ・・・」


「そうだね。看護師さんから、教えてもらったの。大きくなったのを小さくする方法。大きくするのはできるだろうからって・・・」


 看護師は介護の一環として教えたのだろうが、ルルは別なことを考えてる。

 俺は、あたしだって性欲はあるよ、とルルが話したのを思いだした。

 そうか?ルルの中で、初夜の時間が止ったままなのか・・・。

 俺は何とかしなければいけないと思った。 


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