二十一 俺の顔

 その後、ルルは俺と同じ大学に合格した。

 そして、ルルが病室から大学へ通う日々が三ヶ月くらいつづき、俺の頭からギブスも包帯も取れる日になった。首と胸と腰と脚のギブスは簡易の物に変ったが、まだはずしてはいない。


 形成外科で俺の顔からギブスと包帯が取れた。担当医は俺を診て、快復状態に納得している。

「ほおおぉぉぉ・・・・」

 車椅子に座っている俺の顔がルルの目に晒されると、ルルは驚きの表情だ。

「どうなってる?」

「いやあ・・・・、なんというか・・・、先生が言ったとおりだね・・・・」

 ルルが俺を見て少なからず興奮気味だ。

「いやあ、今までが良くなかったという気は無いんだけど、これは・・・」

 ルルはそう言って担当医が差しだす鏡を俺にむけた。


 鏡の中に、俺に似た目鼻立ちの整った男がいる。鼻筋が高く通って頬骨が出ていない。顔の輪郭が細面になってる。

 これが俺か?今までの俺の部分が残っているのは目と口元だけだ。


「術後に骨格を固定してたから、顔の筋肉も贅肉も取れちゃいました。

 これからは顎を使って物を食べるから、筋肉と贅肉がついて元の状態になりますよ。頬骨と鼻は術後の今のままですね」

「ありがとうございました。顔の輪郭が細面になって、カッコいいアキラになりました。顔は気にしないと思ってたけど、ここまで変ると、ウーンって考えちゃうなあぁ・・・」

 ルルは俺の顔を見て考えこんでいる。

 この顔はルルが考えこんでしまう顔なのか・・・・。


「病室にもどっていいですか?」

「いいですよ。皮膚が弱っているから軟膏をだしておきます。あとで看護師がとどけます。

 顔は石鹸などを使わずに、ぬるま湯だけで優しく洗ってください。

 そのあと、薄く軟膏を塗ってください。

 私からは以上です。顔をぶつけないように気をつけてください。

 しばらく顔が寒いでしょうが、皮膚が丈夫になるまで、マスクなどのような物を触れさせないでください。それと、室内照明を浴びないように。日光は壁の反射も避けてください。紫外線を浴びると術痕が染みになりますから。

 今まで以上にハンサムな顔になりましたよ。奧さんが驚くくらいに」

 担当医はほほえんでいる。


「ありがとうございます。では、次の診察の日にうかがいます」

 ルルは終始笑顔だ。

 俺とルルは担当医にお礼を言って診察室を出た。

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