九 解けた疑問
「私たちが付いてるってなんのことだ?」
俺はルルの手を引いてルルの家へ歩いた。
「パパは会社勤めでしょ。ママは主婦。最近、認知症があるってわかったの。最近はいい薬があるから症状は止まってる。
ああ、心配しないでね。私に遺伝しないよ。ママは実の母じゃないの。実の母が亡くなって、私より歳上の娘がいるママと、幼い私がいるパパが再婚したの。
だから、早くから姉は嫁いで家を出る決意をしててそうにしたわ。
姉はパパの遺産を放棄したの。パパの遺産はあたしが継ぐべきだと考えて。
もちろん、姉はママの病気を知らなかった・・・」
ルルは俺の手を握ったまま歩き、歩道を見ている。
「俺の親はママのことを知ってるのか?」
「ママの病気が見つかって、パパはすぐアッキの父さんに伝えた。
そしたら、父さんが、
『だから、どうした?明が言うように、皆で暮せばなんとかなる。それより、かわいい娘ができたんだ。これ以上の喜びはないよ』
って笑い飛ばしたの。
パパは、父さんは太っ腹だ、と言って泣いてた・・・。
このこともアッキに話したんだけど、アッキの記憶が・・・」
ルルの説明は明確だ。ルルは俺の手を強く握った。
俺は手を握り返した。ルルのパパは決断と実行力に優れてる。ルルの性格はパパに似たのだろう。こういうところもルルの魅力だと思いだした。
「心配するな。何があってもルルを守るし、いっしょにいる。帰って勉強しよう」
「うん!」
話しているあいだにルルの家に着いた。俺はルルを守らなければいけない。だけど、いったい何から守るんだろう・・・。
昼食の食卓でルルがママに伝えている。
「アッキの両親が、ふたりが付いてるから心配するなと言ってたよ。
パパにも、後で話しとくね」
「わかってるわ。私、大事にされてる。みんなに」
「そうだね。ママ。あたしも大事にされてる。アッキから、そしてみんなから」
ルルは俺を見つめた。
俺はルルとママを見てほほえんだ。どう見ても、ルルとママは実の親娘にしか見えない。
ルルは俺の両親とも実の親娘のようだ。ルルが俺の両親と親子のようになったのはいつからだろう。ルルと俺がたがいに好き合っていただけで、ここまでの関係になったと思えない。俺とルルがいっしょになろうと決めた理由はなんだったろう。ルルと俺のあいだで特別な事があったのだろうか・・・。
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