五 初夜
「あたしたちの初夜はね・・・」
初夜だなんて、なんてことを言うんだ!もう、しちゃったのか?こういうことを直接訊いていいだろうか?
「ママたちが寝たあと、アッキのとこに行って、布団に入って、ダッコしてもらって寝たよ。暖かくって朝までぐっすり寝ててママに起こされた。
ママはニコニコしてたよ。未来の夫を決めたんだねって・・・。
あっ?やだあー。まだだよ。したいけど、入試も試験もあるから、しっかりおちついてからだよ。アッキがそう約束したでしょう」
それだけならよかったと言うべきか、残念と言うか、複雑だ・・・。
「じゃあ、泊ったら、また、客間だな・・・」
「もう、ここだよ。あたしがベッドで、アッキは布団。でも、朝になればふたりは布団だよ。あれはまだしちゃだめ。わかってるよね」
「わかってる。とにかく、ルルといっしょに居るよ・・・」
常識から言ってそんな事はわかってる。くそ、初夜なんて言うから、二十五日が気になっていたのを忘れるとこだった。
ルルの入試まで、俺がルルといっしょに居ることになったんだから、卒業式の予行練習で、ルルの身に何か起る証だろう。地震か?洪水はないな。そしたら火事か?
あっ?何日もここに泊ることを親たちに話してない。勝手に、ルルの入試が終るまで泊まりこみで家庭教師するなんて決めて、納得してもらえるのか疑問だ・・・。
「アッキの両親にはママが話してるから心配しないでね。アッキの両親は喜んでたみたいだよ。早くお嫁さん、見つけてくれたって」
ルルの話を聞いて思いだした。父も母も晩婚で、小さいときから俺は、早く嫁さんを見つけていっしょになれ、と言われてた気がする。たしか父は、仏壇店はお前の好きなようにすればいいと話してた気がする。今のご時世、住居に仏壇を置く空間がなくなり、仏壇を買わない人が多くなってる。おそらく父はそういう事を見越してたと思う。
「だけど、泊る準備をしてない。着換えも洗面具もない・・・」
「だいじょうぶ。こないだ泊ったときからママが用意してるよ。アッキのテキストは明日持ってくればいい・・・」
「こないだっていつ?」
「今月初め。三回目だったよ」
ずいぶん用意がいい。良すぎるくらいだ。いったいどうなってる?
「ルルは一人っ子だよね・・・」
俺がそう言うとルルが言う
「あたし、姉がいるよ。結婚してる。早い者勝ちと言ってた・・・」
「どういうこと?」
ルルの姉のことは知らなかった。いや、記憶になかった。
「アッキの家と同じだよ。だからうちの両親も、アッキの両親も、あたしたちの事を認めた。あわてなくも、いずれわかるよ」
いったいどういうことだ?
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