外の世界に目を向けるということ

 ショッピングモールで思いがけない遭遇をした日、一人で考えていたことがあった。

この1ヶ月間、ひまりとのいつも通りの関係に安心しきり周りをあまりに見ていなかったこと。

ひまりと二人でいすぎて周りが近づきがたく思っていたこと、もしかしたら気を使わせてしまっていたかもしれない。


 俺は取り立てて人との会話が得意というわけでもなく、むしろ苦手意識を持っている。友達を作りに行くことへの苦手意識もあることから、ひまりが隣にいることに甘えてしまっていたのかもしれない。

 ひまりは今日は友達と遊びに行ったというし、杏さんとも仲良さそうに話していたことから高校でも交流を広げているのは間違いないが、俺が足かせとなってしまっているというところもある気がする。


 正直他人との交流はなくてもと思ってはいたが、高校生活が3年間あることや学校生活でしか得られない糧もあるだろう。創作活動にも間違いなくプラスになるはずだ。幸い龍太郎や杏さんと交流を持つことになりそうだし、ひまりにもその話をしておいたほうがいいかもしれない。そうするとひまりも含めて交流を図れるし、複数人でいれば龍太郎のいう「二人の世界」みたいなのもなくなる…はずだ。

 なにより俺が一人じゃなければひまりが俺につきっきりになることも少なくなる気がする。ひまりが俺に義務感で話しかけているとは思わないが、一人だからつい話しかけてしまっているというこは十分にありえる。


 夕飯の後ひまりの部屋で食休みしながら、考えていたことをひまりへと問いかけてみた。

「ひまりって高校になってから友達できてるよな?」

「なに突然。んーそうだなー数人はできてるって感じかな。今日遊びに行った子たちがそうだよ!」

「今日ショッピングモールでクラスメイトの小林龍太郎と会ってな、いままで気にかけてたんだけどひまりと二人の世界作ってたからなかなか入りづらかったみたいな話でてたからさ。よくよく考えたら、朝と放課後は基本ひまりと一緒にいたなと思ってな、ひまりはいつの間に友達作ったんだろうと思って」

「二人の世界ってそんなまた照れるなー。そうみえちゃってたかなー。えへへ。いや、それはそれとして、こーくんが友達作る邪魔しちゃってたかぁ。こーくん自分からグイグイ行くほうじゃないし、偶然私が隣になっちゃってタイミング逃しちゃってたよね……。わ、私の友達紹介しようか……?」

「いや、それ女子じゃん……。とりあえず今日会った悪いやつじゃなさそうだし龍太郎から交流広げようかと思ってな、ひとまずひまりには伝えておこうかと。」

「ん、りょーかいです!私もちょっと話してみようかな、3人で仲良くできたら素敵だよね!」

「そうできたら高校生活ちょっと楽しくなるしれないな……。あ、そういえばあと一つ、GW明けの放課後ちょっと用事があるからひまりは先に帰っておいてくれ。また当日伝えるけど、とりあえずあらかじめ言っておくよ」

「放課後?どうしてまた?」


杏さんに呼び出されたことは言わないほうがいいかと思ったが、まさか告白とかそういう話でもないだろうしそんな雰囲気はなかった。ひまりは杏さんと仲良くなってそうだったし軽く伝えるぐらいは問題ないか……?

「今日偶然会った杏さんがちょっと用事があるみたいでな、顔を貸してほしいと」

「え?杏ちゃん?夜倉杏ちゃん?杏ちゃんとも会ったの!?というか杏さんって……こーくん杏ちゃんと友達だったっけ?」

「そう、その杏さん。GW前の放課後にちょっと話したのが最初で最後だよ、ひまりもその場にいただろ?まぁ呼び方については流れでそうなっただけで……」

「むっすー。友達できてないって言う割にはやたら手が早いね?」

ひまりはそう言ってジト目を向けてくる。


「……告白……なのかな……」

ひまりがぼそっと呟く。多分独り言なんだと思うが聞こえてしまった。

「たぶん告白とかではない、そんな雰囲気じゃなかったし。そもそも交流なかった人間に突然告白するような人じゃないだろあの人」

「そ、それはそっか」

すごくほっとした顔をするひまり。何が不安だったんだか、友達と俺が恋仲になるのが気まずいとかそういうやつか……?

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才と彩と罪と幼馴染と Rivers @riversons23

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