心と身体が交錯する闇中での出来事。漆黒の夜に、道ならぬ先へと、お互いが求める『もう何処にも存在しないあなた』を宿して、物語は暗がりに花ひらく。
本心から愛しき人を重ね合わせる切なさに、胸が詰まるような感情移入を許してしまいそう。
様々な思案が去来する中、暗黙裡に深部から感じ取るお互いの体熱。
それはまるで欲望に身を任せて咲き嗤う闇堕ちのように、形を変えては流れ込む愛しさに似て――
残映たる追憶を心に宿して、甘美の渇きを身体に流したひと夏の幻夜に、双方の出逢いを、暗曖として果たせたのだろうか。
それは燈火の熱だけが知っているのかもしれない。