エピローグ

一位でゴールテープを切ったあと、観客席に帰ると。

 みんなから、「おめでとう!」「すごかったよ!」と言われながら、もみくちゃにされる。

 みんなからの称賛を受けたあと、救護室に向かう。

「すごかったわ、ひよ! 私、感動しちゃった」

 目に涙を浮かべながら、美咲ちゃんが抱きついてきた。

「ありがとう」って照れながら返して、わたしも抱き返す。

 それから、後夜祭までずっと救護室で鑑賞しているのだった。


 閉会式が終わり、後夜祭が始まるまでの間。わたしは空き教室で、ぼんやりとしていた。

 本当であれば、生徒会として後夜祭のお手伝いをする予定だったんだけど。

「陽依はクラス対抗リレーで疲れているだろうから、ゆっくりしててくれ」

 って、アオくんにいわれたから、その言葉に甘えてゆっくりしているんだ。

 しばらくぼんやりとしていると、後夜祭の始まりを告げるアナウンスが、校舎内に響いた。

 アオくんと踊る約束をしているし、そろそろ行かなくちゃ。

 そう思って立ち上がったそのとき。

 ポケットに入れていたスマホが震えた。

 画面を見てみると、アオくんからメールが来ていた。

Ao 》そこで待っててくれ

 そのメールが来てすぐに、アオくんがやって来た。

「どうしたの、アオくん」

「陽依と一緒に会場に行こうと思ってな」

 そういうと、アオくんはわたしに向かって手を差し伸べた。

 意味が分からなくてきょとんとしていると、

「陽依、疲れているだろ。転ぶと危ないから、掴まれ」

 よくやく意味を理解して、アオくんの手を取る。

 夕日に照らされて、アオくんの顔が真っ赤に染まっている。

 その状態のまま、会場に向かう。

 会場に着くと、視界に飛び込んできたのは、大きなキャンプファイヤー。

 その周りを男女が、音楽に合わせて踊っている。

「一緒に踊ろうぜ」

 手を取った状態で踊る。アオくんの足を踏みつけないように気をつけながら。

 後夜祭も終盤にか差し掛かったころ。

 アオくんと踊っていると、見覚えのあるふたりが踊っている姿を発見する。

 かれんさんと蓮見先輩だ。

 お互いに見つめ合っている。もしかしたら、付き合い始めたのかもしれない。あとで聞いてみよう。

 ふたりの方を見ていたせいか、アオくんの足を踏みつけてしまい、盛大に転ぶ。

「いたたた……。ごめんっ、怪我はしてない?」

「俺は大丈夫だ。陽依の方こそ、怪我をしていないか」

「わたしは、大丈夫。あ」

 すぐ近くにアオくんの整ったら顔があって、心臓が高鳴る。

 なんだか、今日はいつもよりも速い気がするよ。

 アオくんの方をみると、りんごみたいに顔が真っ赤に染まっていた。

「陽依の心臓、ドクドクいっているな。もしかして、俺にときめいてる?」

 にんまりと、笑みを浮かべながらいった。

 図星だったので、なんと言っていいか分からず、押し黙る。

「え、冗談のつもりで言ったんだけどな。マジで、俺にときめいていんの?」

 コクリと一回頷く。

「あー、マジか」

 ひたすら「マジか」と呟くと、おもむろに立ち上がった。

 わたしも、立ち上がる。

 パチン、とアオくんと視線が交わり合った。

「あのさ、俺、陽依のことが好きなんだ。恋愛的な意味で」

 彼がいった言葉の意味が、頭の中に染み込んでいく。

「わたしも。わたしもアオ君のことが好きだよ」

 感情が昂って、抱きしめてしまった。

 アオくんが、照れ笑いを浮かべた。

 

 生徒会に入ってよかった。 

 褒められることの喜びや、新しい出会いもあった。

 アオくんと恋人になることもできた。

 これからも、生徒会臨時の書記として頑張るぞ!

 そう決意を新たにするのだった。

 


 その頃、海外では。

「あー、留学も飽きたなぁ。氷高たちは今頃なにをしてんだろ」

 ひとりの少年が、窓辺で腰掛けていた。

 幸せいっぱいのわたしは、この少年が巻き起こす出来事に巻き込まれるだなんて、知る由も無いのだった。


〈完〉

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天川学園生徒会 泉水 @k_34

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