CHAPTER:das Ende und der Heilige

 フリート。

 奴も実行者だったようだ。





 
とは言っても、俺はあの時の記憶を失った。


 ラゾートがどういう所なのかもそれまでの記憶も。




 
身に覚えはあるのに記憶にないという気味が悪い状態だ。





 高石珠羅たかいしみら救出きゅうしゅつできなかった頃から俺の記憶は欠落していった。





 
力があっても、おとろえても彼女を救えなかった。





 惨授ざんじゅと会った頃に俺は自分の力の無さに絶望し、身投げしようとした。





 
しかし、自殺ってのは簡単じゃなかった。


 人間よりも強い状態では尚更。





 
俺も人間なのに。


 そんな時に惨授ざんじゅに助けられた。





 
たたかってるのは俺一人じゃないと知った感動は忘れていない。




 
でも助けられなかった。





 今度は永久渡綱とわひきつねか!




 
何故、フリートは俺に付きまとう?





 
せっかく芸術を知ったのに。






「俺もそうなんだけど、君は形はどうあれ命をあやめているんだよ。もう言わなくても分かるよね?記憶喪失君きおくそうしつくん






 俺はフリートを切り刻む。
 しかし死んでいる周りの人間の影と雨でまた実体が復活する。





「俺は死なないよ。というか死ねないんだ。
ラゾートの住人とあのインフルエンサー達が違法で創ったにせラゾートの住人の俺とじゃ相性が悪い」





「俺は忘れているが確かにラゾートの住人らしい。俺はこの世の生物がうわさしている楽園らくえんの一般人だった。だが記憶がない今の俺には関係がない。それでいいと許可があるからこそ記憶がないのだ」






「ああ。そうらしいね。それが君の言い訳じゃないのなら俺が君を殺せば答えが見えそうだ」





 フリートも裂獲ざえるを切り裂く。




 
右にかわしたがかすってしまった。


 致命傷ちめいしょうにはならなかったが。




 
すると持っていた赤い結晶が傷を治す。

 珠羅みら


 君が……





 すると惨授ざんじゅが渡してくれた水色の結晶がフリートを吹き飛ばす。




 
フリートは驚いていた。


 フリートには見えない惨授ざんじゅの打撃ラッシュが確実に命を削っているからだ。惨授ざんじゅ





 
 お前は死んだ後もずっと俺の味方でいてくれているんだな。





 すると緑の結晶が俺の手に握られていた。
 この音は…そうか。




 
渡綱ひきつなも俺の理解者なのだな。


 結晶が空気全体を震わせる。




 
フリートは全身の感覚がゆがんでいるのだろう。




 
打撃と波動がフリートの細胞を砕く。





「な、なんだと。この……力は!まさか、ラゾートの連中は……! 」






 俺も輝きを宿そう!
 金色の結晶が三つの輝きと俺の力に反応し生まれた。





まがい物の理想郷りそうきょうは消える。永き因縁いんねんもこれで終わる。俺自身の経験の手によって、フリート。
貴様をほうむる」






 何かを言いかけたフリートに有無を言わさず四つの輝きで始末した。






 ◆






 あれから俺の新たなラゾートの再建さいけんが始まった。




 
本物のラゾートからは無かったことにされ、偽物のラゾートはフリートの死によって消滅した。





 誰も助けにこなかった。




 
どれだけ信仰しんこうをしていても神も人も動物も助けに来ない。




 
無力な己を責めるだけだ。




 
何故だ!





 
俺たちは日々のあたたかさを実感し、時に泣き、笑い、怒りを通して切磋琢磨せっさたくましていく動物じゃないのか?





 俺たちは常に生かされている。


 飢え、乾き、恐れ。




 
それらを乗り越えた先に希望があると言われてな。





 
だからこそ俺、珠羅みら惨授ざんじゅ渡綱ひきつなそろった。


 あらゆる行いは不幸せをなげくための犠牲ぎせいでしかない。





 
お前達はそれで幸せか?




 
犠牲を否定できない俺は自分自身を憎んでいる。




 
何故なら。




 
それが生きるということだからだ。




 
ラゾートが現時点での理想郷でありたたえるべき神ならば、俺はその存在を否定する。




惨授ざんじゅ。君の言っていた通りの事態じたいになった。本当に俺はうつけ者だ。それならまだよかった」





 歩を進め、一人の格闘家の名を呼ぶ。





渡綱ひきつな。お前はかつて言ったな。
 必要のない無駄が新しい見解をくれると。正解だ。最も、俺がその無駄の一つでしかないなんてトンチがききすぎているが」




 また歩みを進める。気のせいかどこかで彼がかなでていた音色ねいろが聞こえた。





珠羅みら。願い、叶えられなかったな。
この悔しさは俺達の中で忘れないで背負っていこう」




 さらに歩みを進める。どこかで彼女が笑っていると信じて。

 いや、無理やりな笑顔なんて苦しいだけか。





「今日からくずれる幸せを求めるための競争きょうそうは終わった。強者から全てを還元し、俺が弱きを守る。ゆがんだ道徳を持つ老婆ろうばおきなは始末して構わない。良識を苦楽を共に手に入れた者たちに得るべく幸せが供給きょうきゅうされる。」





 それこそが。



 
四名の生命を犠牲にしてしまった俺のばつであり、つぐないだ。



 
どうか。




 どうか俺の力で未来をまもらせて欲しい。

 そして俺だけを誰もゆるさないでくれ。




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LAST RESORTED 釣ール @pixixy1O

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