逃走戦隊バックレタインジャー
めいき~
バックレレッドの受難
「さぁこい!悪人ども」
黒タイツの悪人モブ達に俺はポーズを決めながら言った。
「いぃぃ~(先生おなしゃす)」
そこへ、戦隊ヒーローよりもひときわどでかい爆発と共に現れたのは……。
(あれ、監督じゃないっすか)
台本を書いている監督が、怪人の変わりに現れた。ちなみに、白いスーツでびしっとオールバックに決まっている。
「この私の眼が黒いうちは、ヒーローがかっこよく勝てるなぞ思わない事だっ変身んぅぅぅぅ!!」
(俺より、カッコいいじゃねぇか!)
もともと監督イケメンだからか、客席のお母さんたちの黄色い声援が若干羨ましい。
「くそ、だがしかし俺には子供達の声援が……」
「「「頑張って♪監督ぅ~~」」」その子供達の声援を聞くなり芋虫の様に顔から地面につっこむバックレレッド。
爽やかなスマイルで、もはやレッドの方がモブで引き立て役となっていた。
「納得いかねぇ!!」腹の底から叫ぶレッド、草葉の陰でイエロー達が高速で首を縦に振る。
「納得などしなくてよい、勝つのは私だ。ちなみに、私に一撃入れる度に君のギャラが声援無しだけに千円ずつ下がるからそのつもりで頼むよ」
そんな事を宣う監督、ちなみにご当地ヒーローは元々薄給の為いとも簡単に零になりそう。
(ムリゲー)
そこで、イエローから一枚の写真が投げられた。
「レッド、これを使って」
パシっと小気味よい音が会場に響き、レッドが指で挟んでそれを受け取る。
「監督の浮気現場の写真よ。ちなみに、相手はピンク役の操ちゃん」
「ありがてぇ!」写真を受け取った反対の手で親指を立てながら叫ぶ。
「クソ、何故それを!!」慌てふためく、監督。会場の子供と母親がさっきまでの声援が嘘の様にゴミを見る様な視線に変わる。
「尾行して隠し撮りしたのよ」
「クソ、あの不細工」
「おい、聞こえてんぞ」
凄まじいカポエラと極真空手を組み合わせた猛攻で、写真を奪いとろうとするがレッドが冗談みたいな動きで避ける避ける。まるで、猫と鼠のアニメを見ている様だ。
「やるじゃないか!」
「薄給とはいえ、ヒーローなんでね浮気する様な悪に負けるわけにはいかないでしょう?」
急に両手を叩いて、監督が吼える。「ブルー、ブラック今寝返ったら今月のボーナスは五百万ボーナスをつつんでやるぞ」
「二人でですか?」「一人づつに決まっている!!」
「「「レッド、死んでくれ!」」」
「なんで、イエローまでうらぎってんだYO」
「そりゃ、そんなに包んでもらったら普通に心が動くわよ」
「SONNA!」
「監督、ヒーロー用レーザービームです」「おう、助かる」
「それ、俺の支給品なんだが」
「私が用意した武器何だから、私は使えるに決まっている!」
「えぇい! それでも俺は汚い大人になんか負けないぜ!!」
「その写真だけは、きっちり証拠隠滅で燃やしたらぁ!」
イエロー、ブルー、ブラックと監督がレーザーをうちまくり、それを気持ちの悪い動きでそれを更にかわすレッド。ちなみに、その姿は今にも消え入りそうな哀愁漂うサラリーマンが蜃気楼に映っている様に揺らめいては後ろにレーザーが抜けていく。
「「「レッドってあんな動けるヒーローだったんだ」」」三人が関心していたらカチカチと音がしてよく見れば弾切れになっていた。
「そりゃ、使える格闘技は全部師範クラスだからな」「なんでじゃぁいつも負けそうになってんですか?」「単純に空腹なんだよ、先日も電気とガスが止まったとか言ってたし」「うわぁ」
「ちなみに、私の昨日の夕飯は黒毛和牛のA5ステーキキャビアをのせてだったぞ」
「殺す!」「ヒーローが殺すはいかんなぁ」「ヒーローの台本書いてる奴が浮気してステージの上でヒーロー堂々買収してるよりはマシだろが!」
イエロー、ブルー、ブラックが高速で首を縦に振る。
空中に飛び上がり、燃えるオーラーをだしながら飛び蹴りしながら叫ぶ。
「ほろべぇぇぇぇぇぇぇ!!」そこへ、すっとブラックの後ろに隠れる監督。
腹を貫かれて、舞台の端まで転がっていくブラック。ちゃっかり背中を掴んでバックラーで亀の甲羅の上を滑らせるような要領でブラックだけにレッドの必殺技を食らわせて受け流し。指でチッチッチとやって、にへらと笑う。
「惜しい」
着地して間髪いれず、拳をアッパー気味に振りぬくが監督は素早くブルーを掴むと素早く場所を入れ替えた。
それによって、ブルーの顎にクリーンヒットしてブルーはブラックの横に転がっていく。
それを監督は、ワザとかわい子ぶりながら「いたそぉ~♪」とか腰をくねくねさせながら言ってイエローが思わず「オッサンキモッ!」と声を漏らす。
「監督こそやるじゃねぇか」「私はな、人の成功をかすめ取り。痛い思いはこうして人になすりつけ。全ての苦難から逃げおおせてここに居るのだ、年季と練度が違うんだ」「ヒーローとして余計に負けられねぇわ、アンタには」
「正義は勝つ」「違うな、勝った奴が正義を名乗るんだ。負けた奴は全員ドブネズミのゴミ屑に決まっている!」
「私を倒して、君が正義になるのか。私が君を倒して、貧乏人ざまぁ~とか言いながら腹をすかせた君の前で回らない寿司を見せびらかしながら食べる以外のエンドは無い」
「「「「「「「負けないでレッド! そんな、大人の屑に負けないで!!」」」」」」」
子供達と、主に哀愁漂うサラリーマンのお父さん達から熱い熱い声援が送られ。レッドが拳を握りしめながら、天高くつきあげた。
「風向きが変わったな、監督」「ふっ、声援があれば人は強くなれるとそう勘違いしているな」「少なくとも、ヒーローは応援してくれる人が居るからつえーにきまってんだろが」
監督がフィンガースナップを一つ、パチンとやると大地が揺れる。
余りの揺れに、会場の子供や大人達がふらついてお互いを庇いあう中で監督が吼えた。
「力とは! 弱者を踏みつぶしてこそ!! それを証明しようじゃないか」
監督が、親指でビッと後ろを指さした。
「ヒーローものの最後は、巨大ロボと巨大怪人の一騎打ち!! だが、お前には巨大ロボはない。(笑)」
「何処まで、卑怯なんだあんた!」
「んぅぅぅぅ~?聞こえんなぁ」
その後、巨大ロボから成敗!というセリフが聞こえたとか聞こえなかったとか。
レッドは、頑張った。人間サイズで頑張った!
子供達の声援を過去一受け、お父さんやお母さんの応援を一身に受け。
それでも、サイズの差はどうしようもなかった。
<おしまい>
逃走戦隊バックレタインジャー めいき~ @meikjy
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