仕上げ

 祖母がいなくなった。家族内の共通目標だったものが無くなってしまった。家族はあの小学4年生の時よりも後の関係性に戻るのは必然であった。

 もう既に親父がどんなふうに笑い、どんなふうに怒るのかが分からない。もう母親から親父の愚痴を聞かなくなった。

 もう私は両親のおもてを見ることができない。またしても両親は2人して私を責めるようになった。


 もう沢山だ。私には親父の様なことは出来なかった。


 私は久々に、家族に嘘をついた。祖母が来てからというもの、私に嘘は必要無かった。実に久しぶりだ。それも、大それた嘘だ。バレてもどうでも良かった。

「友達と東京に旅行してくるわ。これから受験期に入るし、最後だと思って行ってくる。」

 両親は止めなかった。

 東京に行く口実が出来た。一緒に行く友達なんていない。正真正銘、自由になった。

 私は東京に行くだけの金しか持ち合わせていなかった。現実から逃げるための金までは、工面できそうになかった。これからは金が十分に必要になるだろう。


 親父の姉のところに行ってみようか。

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家族 石ころ @deep-osakana

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