第3話 最強の敵

 ブルベは空間から抜け出すと、高速で飛行する。

 一度着替えた後、桃香の家へ向かっていた三瑚の前に降り立つ。

「お前魔法少女だな? 変身しなさい」

 ゾクッ、三瑚の背中に寒気がはしった。

(なに、この人? 私でもわかるぐらいに危険な感じがする)

 ためらいをみせる三瑚にブルベは苛立ちをみせる。

「聞こえなかったか? 魔法少女に変身しろと言っている」

 首を横に振り拒絶の意思をみせる三瑚。

 ブルベは三瑚の首を掴み持ち上げる。

「変身しないなら用はないな」

 ブルベがその手に力を込めようとした時、マジカルピーチが現れた。

「その手をはなせーーーーー!」

 マジカルピーチのパンチがブルベの顔に当たる。 

 三瑚の首からブルベの手が離れ、ブルベは軽く後方に飛ばされた。

「他にも魔法少女がいたか」

 ブルベをにらみつけるマジカルピーチの姿を見てから三瑚の意識は遠のき気絶した。

「その少女の魔法少女の力を得ることは出来そうにないな」

 ブルベがマジカルピーチに向けて手をかざす。

 《変身強制解除》

 マジカルピーチが桃香の姿へと戻る。

「私は魔法少女ブルベ、この世界を滅ぼそうとしたため災厄の魔法少女と呼ばれて封印された」

 レモンチュが息を切らせながら桃香の後ろにやってくる。

「速過ぎモ。 ここまで来るの大変だったモ」

「お前は魔法精霊。 ならば次の魔法はこいつだな」

 《パーフェクトノイズ》

「私は一度見た魔法少女の力をコピーできる。 今使ったのは私以外の魔法を封じる魔法だ」

 飛ぶための魔法が消え羽が重くなりレモンチュの体が地面へと落ちていく。

「お前はブルベ、千年前に封じられたはずなのに何故?」

「空間にヒビが出来たので、うちがわから壊させてもらった」

 レモンチュの体が完全に地面に着くのを見てブルベは桃香を見る。

「おまえが力を与えた少女は魔法を使うことも魔法少女になることもできない。 そこで私に少女が倒されるのを指をくわえて見ているがいい」

 高速で桃香の前にブルベは移動した。

「まずは先ほどの超パワーでその肉体を破壊してやろう」

 ブルベが桃香の体へパンチを放つ。


 ぺちん。


「いったぁーい」

 ブルベが桃香の体に当てて痛んだ拳の先端をさする。

「え、なんで私のほうがダメージ受けてるの?」

 気を取り直し、ブルベは自身の時を加速させる魔法で後方に移動する。

「その服の内側になにを仕込んでいるのかはしらないけど、これは防げないでしょう」

 ブルベが自身の周りに複数の丸い魔法の弾を浮かばせた。

「くらいなさい」

 号令をかけると魔法の弾が一斉に桃香へと襲いかかる。

「魔法を使えないあなたでは、その魔法の弾を防ぐことはできな」

 ブルベが言い終わるよりも早く、桃香は連続で魔法の弾に一発ずつパンチをぶつけて魔法の弾をすべて破壊した。

(え、なんなのこの子。 魔法使えないはずよね?)

 桃香は息を吸い込んで拳を握ってブルベに向かって走りだす。

《魔法の盾五連》

 攻撃の意思を感じ取ったブルベが自身の体の先の五枚の魔法の盾を作る。

(この魔法の盾は簡単には破れない、おまえがぶつかった瞬間に次のまほ)

 ブルベの腹に鈍い痛みがはしる。

 五枚の盾すべてを一撃で破壊した桃香のパンチをくらったのだ。

 ブルベの体が空高くに舞い上がった。

「なんなの、この子?」

 魔法の盾により桃香のパンチは弱まったためブルベの意識は消えなかった。 しかしブルベはそのことに気づかない。

「これは私の復讐の物語、邪魔な者は排除する」

 ブルベの体から闇に染まった炎があふれ出し、その炎は巨大な剣へと代わった。 

 その剣の塚をブルベは握った

「これは災厄の大剣。 因果を無視し宇宙の法則を乱し銀河を切り裂く、この剣で世界を滅ぼそうとしたため私は封じられた」

 ブルベが災厄の大剣を振り下ろす。

 だが、桃香は片手で受け止めた。

「斬られなさいよ。 なんなのよ、あなた一体?」

 思わす泣きそうな声をブルベはあげた。

 桃香は軽く力を込めて災厄の大剣の刀身を折った。

「あなたは今ここで倒す」

 そう宣言すると桃香はジャンプして渾身の一撃をブルベに放った。

 意識が飛びブルベの体は軽く上がったあとに地面へと勢いよく落下する。

 ブルベの使っていた魔法の効果が消えレモンチュは魔法の力で宙へ飛ぶ。

 落下した時の衝撃で意識を取り戻したブルベは桃香を睨みつけた。

「私の維持していた体内にある魔法の核がお前の一撃で壊れた。 私は消えるが、私のような者があらわれていつの日かお前を倒……」

(あ、無理。 こんな最強の敵倒せる奴なんて多分あらわれない)

 ブルベの体が塵となり消える。

 こうして災厄の魔法少女と呼ばれた者は消えた。

 レモンチュの持つ魔法通信機器の着信音が鳴る。

 機器を開くと”パフェット”の女王の姿が液晶に映る。

「女王様、予言どおりに桃香ちゃんに世界は救われたモ」

「まだ世界は救われていないのです。 魔法鳥がその星の侵略を企む異星人の宇宙船が大量に近づいていることに気づいたのです」

「それは大変だモ」

「桃香さん、彼らを倒すためにこれから魔法少女として力を貸してくれませんか?」

 地面に落ちていた小石を桃香は拾う。

「確かに地球に存在しない気がたくさん近づいているね」

 桃香は空を見つめる。

「この角度かな」

 拾った小石を勢いよく空へと投げる。 その小石は地球を飛び出し、近づいていた異星人の宇宙船に貫き、更に後方へ連なっていた宇宙船をも貫いてすべての宇宙船を爆発させた。

「魔法鳥が異星人の宇宙船が消えたことを感じたそうです」

 ”パフェット”の女王が予想外の展開に驚きながらレモンチュに伝えた。

「うーん」

 三瑚が意識を取り戻し起き上がる。

「えっと、さっきの怖い人は?」

「それなら倒したよ」

「そう。 それじゃあ桃香ちゃんの家で宿題やりましょう」

 二人は桃香への家へと向かう。

「あのレモンチュ。 桃香ちゃんの監視お願いしてもいい? 一番危険なのあの子が気がするの」

「女王様の命令に逆らえるわけないモ」

 レモンチュは桃香を監視するため人間界に残り、桃香は大人になるまでの時間を共にすごしていく。



                                ~おわり~



               

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魔法少女マジカルピーチ 稲垣博輝21 @hirokisama

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