第2話 新たな魔法少女メロンスカイ

 魔法精霊レモンチュは巻物を開き、熱心に魔法少女強化アイテムのある場所を考えていた。

 ガラリと二階の部屋の窓が開き桃香が帰ってきた。

「どこ行ってたモ? こんなに朝早くに」

 桃香は担いでいた荷物をどさっと床に置いた。

「これワルポンだモ、こんなにたくさんどうしたモ!?」

 軽く体をストレッチでほぐしながら桃香は答える。

「今まで地球になかった気を探して、朝の運動ついでに捕まえてきた」

「こんなにたくさんモ。 どれだけいるモ?」

 気を失っているたくさんのワルポンをみながらレモンチュは呟いた

 レモンチュはワルポンを”パフェット”へと転送した。


 残りのワルポン1体


「って、今日の朝だけで106体つかまえたモ」

 桃香はランドセルを背負い、部屋のドアを開ける。

「じゃあ、学校行ってくるね」

 

 いつもと変わらない学校での時間を過ごし桃香は幼馴染にして親友のはかり  三瑚さんごと一緒に帰りへの道を歩く。

「桃香ちゃん、明日は宿題忘れたらダメだよ」

「うん、わかってる。  三瑚ちゃん、今日は宿題写させてくれてありがとう」

 異質な気の接近を感じて桃香は足を止める。

 空を見上げると、巨大な異形の生物が一体降ってくる。

 地面に激突して軽く地響きをあげながらも、その生物は平然と立ち上がった。

 三つの目と左右合わせて六本の腕を持ち、その背中には巨大な貝殻を背負ったワルポンナマラデ貝。

 ナマラデ貝は目の前にいる二人の少女に気づくとその拳を握り少女めがけてパンチを繰り出した。  

 霧香は三瑚の前に飛び出すと魔法のステッキを振るい呪文を唱えて魔法少女マジカルピーチへと変身した。

 先ほどの地響きに気づいたレモンチュが二人のいる場所へ慌ててやってきた。

 レモンチュの目に映ったのはナマラデ貝のパンチをくらい、激しく吹っ飛ばされたマジカルピーチの姿だった。

 マジカルピーチはすぐに立ち上がりすぐさまナマラデ貝の眼前にジャンプして移動し、そのパンチをナマラデ貝へぶつけた。

「なんだこのパンチは痛くも痒くもない。 パンチっていうのはこういうのをいうんだ」

 ナマラデ貝は六本の腕でマジカルピーチへ連続でパンチを浴びせた。

 マジカルピーチの体が地面に沈む。

「三瑚ちゃん逃げて、今の私じゃこいつには勝てない」

 マジカルピーチはゆっくりと立ち上がりナマラデ貝を見る。

「逃げるぐらいの時間稼ぎはできるから」

 レモンチュはそんなマジカルピーチを見て呟く。

「まずいモ、本当にピンチだモ。 パワーアップアイテムの場所もまだわかってないモ、せめてもう一人魔法少女がいればマジカルピーチも一緒に逃げれたかもしれないモ」

「ねえ、よくわからない生き物さん、私じゃ魔法少女になれない?」

「モ? 君に素質があればなれるモ、ためしてみるモ」

 レモンチュは魔法のステッキを三瑚に渡し使い方を説明した。

 三瑚の体が眩しい光に包まれる。

「二人目の魔法少女モ」

 光がおさまると三瑚の姿は銀色のぴっちりとしたスーツ、左腕には液晶付き小型キーボード、顔には液晶ゴーグルをつけたサイバーテックな姿に魔法少女メロンスカイになっていた。

「ぜんぜん魔法少女の格好じゃないモ」

「魔法少女の姿が未来風じゃないなんて誰が決めたの?」

 メロンスカイは左腕のキーボードのキーを右手で打つ。

「魔法瞬間演算しゅんかんえんざん発動」

 液晶から光が飛び出し、その光の中に浮かんでいた数字とアルファベッドがメロンスカイの周りを高速で回転する。

 数字とアルファベッドがゴーグルの液晶に吸い込まれていく。

「計算完了」

 メロンスカイは液晶ゴーグルを上にずらすとマジカルピーチに大声で叫ぶ。

「桃香ちゃん魔法少女の変身を解いて!」

 その言葉にレモンチュが驚く。

「なに言ってるモ、魔法少女じゃないとワルポンと戦えないモ」

 マジカルピーチがメロンスカイを見る。

(この気は三瑚ちゃん)

「桃香ちゃんは魔法少女になってるからいつもより弱くなってる。 大丈夫、私を信じて!」

 メロンスカイの言葉にマジカルピーチは頷く。

「変身解除!!」

 マジカルピーチの体が再び光に包まれて、ショートパンツとタンクトップ姿の小学生桃香へと戻る。

「あきらめたのか、いい心がけだ。 一息に楽にしてやる」

 ナマラデ貝がその腕の一つを大きく振り下ろす。

 だが、その腕の下には誰もいない。

 既に眼前にいる桃香の姿にナマラデ貝は驚きを隠せなかった。

「なんだこのスピードは!?」

 驚くナマラデ貝の顔を桃香は軽く蹴った。

 ナマラデ貝の体がぐらりと揺れた。

 地面に平然と着地した桃香は軽く笑みを浮かべた。

「体が軽い、これなら負けない」

 その言葉にレモンチュが再び驚く。

「魔法少女に変身してたら弱い魔法少女ってどういうことモ?」

「桃香ちゃんが強人塾で身に着けた超パワーと魔法は相性が悪すぎただけ」

 そんな二人の会話をよそにナマラデ貝が桃香に六本の腕で連続でパンチを浴びせる。

「これがパンチ? 痛くも痒くもない。 パンチってのはこうやるのよ」

 桃香はジャンプし、ナマラデ貝の腹にパンチを放つ。

 ナマラデ貝の体が空高く舞い上がる、ナマラデ貝の意識はもう無かった。

 その巨大な体が地面に落ちるとすぐにレモンチュが捕縛用ロープでナマラデ貝を拘束し”パフェット”へと転送した。


 ワルポン全捕獲、ミッションコンプリート!!


「こんなにあっさり終わるモ。 強化アイテム探してる時間はなんだったモ?」

 メロンスカイが変身を解き三瑚の姿へと戻る。

「あとで桃香ちゃんのおうち行くからね、明日は宿題忘れないように見てあげる」

 桃香とレモンチュと三瑚がその場から離れた。

 

 ピシッ


 誰もいなくなったその場所の空にヒビが入る。 

 そのヒビは瞬く間に広まる。

 魔法少女が戦う時、その体から魔法の粒子りゅうしが出ている。

 その粒子が壊れた物質や空間を修復する。

 だが今回桃香は魔法少女ではない戦いをしたため、魔法の粒子は出なくなり空間の修復がされなかった。

 パリン、空が割れた。

 その先に一人の魔法少女が浮かんでいる。

 闇に染まった衣服とオーラ。

 彼女の名はブルベ。 かって世界を破滅させようとして災厄さいやくの魔法少女と呼ばれ封印された者。

 ブルベは眼下に広がる待ちを見つめる。

「感じるぞ、この時代にも魔法少女として力を与えられた存在を」

 ブルベが不敵に笑う。

「ならば始めよう、私の復讐の物語を」




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る