魔法少女マジカルピーチ

稲垣博輝21

第1話 誕生魔法少女マジカルピーチ

 道着姿の小学五年生の少女霧笛きりぶえ 桃香ももかは放課後の日課を行おうとしていた。

 かって人気を博した宇宙生命体強人きょうじんたちを主役にした漫画があった。

 桃香の父はその漫画への熱が冷めることがなく、強人塾を開いたが門下生になろうとする者は一人としていなく、桃香だけを小学一年生の時から鍛えていた。

 息を吸い両の拳を握った桃香は上空から異質な気がくるのを感じた。

 日課の準備運動に進まず桃香は顔を上げた。

 背に羽を生やした狸のような顔をした生き物がいた。

「君が霧笛桃香ちゃんモ?」

「そうだけど、あなたは一体なに?」

「僕は魔法世界”パフェット”からやってきたレモンチュだモ。 実は”パフェット”に封じられていた108体のワルポンの封印がとけてこっちの世界にやってきたモ」

「ワルポン?」

「その説明がまだだったモ。 ワルポンが悪に染まった魔法精霊モ、こっちの世界でもわるいことをするモ。 ”パフェット”の女王さまが予言したモ、君が魔法少女になればワルポンを捕まえることが出来るモ」

「別にいいけど」

「ありがとモ」

 レモンチュが手で空中に不思議な絵を描くと、桃香の手に小さなステッキが現れた。

「その魔法ステッキを振って呪文を唱えれば魔法少女に変身できるモ。 この近くにワルポンの反応があったモ」

「変身すればいいんだね」

 桃香が魔法ステッキを振り呪文を唱えると、桃香の体が光輝くフリフリのスカートの魔法少女マジカルピーチに変わった。

「ワルポンの反応があった場所はモ」

「大丈夫、さっきから人とも動物でもない気は見つけてるから。方角はこっち」

 少し向きを変えたあと、マジカルピーチは駆け足で走りだす。

 百メートル5秒というスピードで。

「は、速すぎるモ」

 レモンチュが羽をばたばたと動かしマジカルピーチのあとを追う。

 

 ワルポンの一人ソージキャーは掃除機のような右腕で人間を吸っていた。

「この星の人間は一人残らず吸い尽くし、われらワルポンがこの星を支配しましょう」

「そこまで」

 現場に着いたマジカルピーチは、上機嫌だったソージキャーに言った。

「あなたがワルポンね、捕まえさせてもらうわ」

 ソージキャーはマジカルピーチの近くに息を切らせながら飛んできたレモンチュに気づいた。

「おまえ魔法精霊か、ならその魔法少女は女王に力を与えられたということか」

 掃除機のような右腕をソージキャーはマジカルピーチへと向けた。

「また封じられるのは嫌なんでな、最初から全力で吸わせてもらう」

 ソージキャーの右腕がギュオーンと音を立て激しい吸引力を発揮するかと思った瞬間、いつのまにかソージキャーの横に来ていたマジカルピーチが手刀の一撃でソージキャーの右腕を破壊した。

 マジカルピーチはソージキャーの体を持ち上げたあと空高く放り投げた。

 地面を蹴り自身も高く跳ぶと、マジカルピーチはソージキャーの足を手で掴み、足をソージキャーの首にかけた。

「強人七大奥義の一つ、やじり落とし」

 そのまま勢いよく落下し、ソージキャーの体が地面に突き刺さる。

 ワルポンとマジカルピーチの戦いを見たレモンチュが小さく呟いた。

「魔法使ってないモ……」

 

 ソージキャーは魔法の鎖で拘束され”パフェット”へと転送された。

 登校する桃香を見送ると、レモンチュは巻物を広げた。

「ソージキャーは最弱のワルポンだモ、今のままだと勝てないワルポンが出てくるモ」

 レモンチュは巻物に書かれている文字を見つけた。

「魔法少女の仲間と、ここに書かれている強化アイテムを早く見つけないとだモ」


 

 残りのワルポンは107体。

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