リスト7(No.053~No.058)シニア向け/歴史小説編

※このリストは、『小説の書き方本を108冊読んでわかったこと』のリストの一部です。本編は以下のURLをご参照ください。

https://kakuyomu.jp/works/16818093082304773813/episodes/16818093082680236247


No.053

『50代60代なら誰でも面白い小説が書ける』

わかつきひかる 著 2015 秀和システム

感想:

 カルチャーセンターの創作講座の講師をされている作家さんによる一冊です。

 書名の通り。50代60代の方なら誰でも面白い小説を書くことができる、というのが本書の主張です。その理由としてあげられているのは、中高年が書く小説は新しいセンスにあふれ、若い人にはない人生経験やめずらしい体験をしてきていること、また小説というのは思っているよりも障壁が低いこと、です。

 ハコガキやプロットのシートがついていたり、中高年の方が抱きがちな、様々な「書けない理由」に対し一つ一つ対策を教えてくれたりして、年齢の高い初心者に寄り添っておられます。また、遅咲きの作家の一覧(49歳から75歳まで)が一覧で掲載されたり、出版社数と総売り上げの推移が表で掲載されたりして、わかりやすく簡潔に伝えようとされている様子が伝わってきます。

 構成、キャラクターなどの定番のノウハウの他に、タイトルつけのメソッドが紹介されたりしているのがユニークなところです。

 全編通して、「あなたにも書けます」「中高生なのに、ではなく、だからこそ書けます」というメッセージに満ちており、勇気の出る一冊だと感じました。


No.054

『60歳で小説家になる』

森村誠一 著 2013 幻冬舎(幻冬舎新書)

感想:

 60歳という数字が書名にありますが、本書の主眼は、年齢というよりは、定年退職後に小説家を目指すことのススメ、と言ってよいでしょう。第一章「なぜ60歳で小説家デビューを目指すのか」、第二章「会社で成功しない人が小説家として成功する5つの理由」、第三章「小説を書き始める際に必要な事」、第四章「感性の保ち方」、……という章の並びからお気づきかもしれませんが、ビジネス書や啓蒙書に近い内容になっています。

 会社勤め一筋で生きてきた会社人が、退職を前にふとそんなご自身の人生にあらためて疑問を持って本書を手に取り、ページを開けば目に飛び込んでくる「人生一毛作でいいのか」「余生こそ自由。余生を誉生に」といった訓示に衝撃を受け、一念発起して小説というものを書いてみようと思い立つ、という光景が目に浮かぶようです。

 第五章「作家になると、こんなに得をする」では会社勤めでは得られなかった人生が描き出され、第六章「アイデアはどこから生まれるか」では著者さんの素晴らしい発想法を学び、ようやく第七章「小説の書き方」となります。この章では主にミステリーを題材に、プロットやトリック、意外な結末などの重要な要素について教示されます。

 賞に応募する際の心構えやアドバイスまで書かれており、新たな生きがいに燃える中高年の方がとりあえず一通り知りたい教えが網羅されているように思います。



No.055

『即上達! 60歳からの小説の書き方全極意』

五十嵐 裕治 著 2013 コスモトゥーワン

感想:

 本書の対象は、60歳以上の方でこれから書いてみようと思う方からなかなか受賞に至らずがっかりしている方まで、ということです。

 まえがきに、本書の最大の特徴として”文学賞を受賞された「高齢作家」さんの作品や姿勢を学ぶ”ことと”人気作家さんの作品から書く技術を学ぶ”ことが挙げられています。なお「高齢作家」は、本書では60歳以上でデビューないし受賞された作家さんを指すようです。

 確かに、大器晩成型の作家さんの紹介をされている序章にも、ジャンル別にノウハウがられる実践編にも、多くの作家さんに言及があり、各作家さんの特徴や参考にすべき点がたくさん学べます。

 それから、特にそう謳っているわけではありませんが、本書の特徴として“発想がシンプル”であることが挙げられそうです。“基礎知識編”では、小説の構想の方法や基本的な文章の書き方が書かれているのですが、この章で特にそういう印象を受けました。


No.056

『体験的「定年作家」のススメ』

三日木人 著 2021 つむぎ書房

感想:

 編集会社を経営された後、還暦を過ぎて作家になった方ということで、実体験に基づくノウハウです。

 定年後に作家になることをとても気軽に勧めておられます。作家になるメリットとして、「引きこもり生活でできるので感染症リスクがない」「たまには取材がてら温泉にも行ける」「印税や講演料で暮らしていける」といったことを挙げておられます。

 基本的に「還暦世代の方は人生経験が豊富で、独特の人生観を持ち、若い人が持ち得ない知識、特に歴史に関する知識を持っている。」という前提で話が進みます。また、「小説を書くには才能も、基本的には技術も不要」という前提もあります。だからだと思いますが、本書には、作家になるメリットや、投稿の方法は書かれていますが、小説を書く際の技術についはほとんど全く言及がありません。しいて言えば「プロットなどは箇条書きでOK」ということです。

 これらの考え方に同意される方で、気軽に作家業をはじめてみたいという方には本書がよく合うかもしれません。


No.057

『新時代小説が書きたい!』

鈴木輝一郎 著 2020 河出書房新社

 何作か小説指南本を書いておられる小説家の方の、時代小説に特化した一冊です。

 編集者との打ち合わせ、あるいは新人向けには新人賞に応募する際の意気込みからはじまり、時代小説の特徴、資料のおすすめ、探し方、後半では時代考証の基礎として入門レベルの注意点が挙げられます。資料探しや準備におけるパソコンの使い方が詳しく書かれているところ、あるいは定年すぎ・還暦過ぎの方へのエールなどから、シニアな方の読者を想定しているようにも読めます。

 “時代考証は面白い小説とはまた別の次元の問題であるはずなのであるが、だからこそ目立つところで「たかが時代考証」の失敗で作品全体の印象を損ねることのないように”という一節があり(p.126)、フラットな考え方の方なのだなと思いました。

 入門書という位置づけなので、資料の読み方、後半の歴史事実の列挙などはどうしても踏み込みの浅い面もありますが、具体的な資料の紹介なども載っていますので、この本をスタートに時代小説に入門するのも良いでしょう。


No.058

『人生を豊かにする 歴史・時代小説教室』

安部 龍太郎, 門井 慶喜, 畠中 恵 著 2022 文藝春秋(文春新書)

感想:

 三名の作家さんの、修業時代から仕事論、もちろん技術論まで、幅広い話題に鋭くインタビュー形式で迫った一冊です。

 お三方に共通しているのは、厳しい修業時代を経験しておられるというところで、やはり商業作家として極めるにはそういう経験が必要なのかな、と思わずにはいられません。

 プロットの立て方、推敲の仕方、おすすめの歴史資料、心構えなど、多岐にわたって、お三方それぞれ話が弾んでおられる様子がわかります。

 お三方とも歴史・時代小説を絶対視しているのではなく、どこか相対化した視点をお持ちだという印象を受けました。戦略的に書かれている、といってもいいかもしれません。

 “「事故」「精神」など、劇中の時代には存在しなかったことばを使いたくなった時にどうするか問題”に対する「秘伝」の答えは、個人的にとても心に残りました。

 全体的にお話がとてもわかりやすいので、これから挑戦してみたい歴史小説執筆初心者の方にもおすすめできます。




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