帝国防衛会
@nishiyamakenzan
第1話 青年
十人十色という言葉があるように、人々は個々の特徴を持っている。
それは色《いろ》として体に宿っているとされている。
しかし人々の大半は自分に宿る色を知ることなく亡くなっていく。
だが、ごく稀に色をつかさどる人間がいるという。
そのものを特色者《とくしょくしゃ》という。
その存在は良くも悪くも、この世界を大きく変えることとなった。
________________
― 速報です!住宅街で大規模な火災が発生!こちらは上空からの映像です・・・ ―
炎が次々に家を飲み込み、街一帯を襲うかのように勢いを増していく。
そこはまるで地獄のような景色が広がっていた。
そんな中、燃える家の中で一人の青年が微かに息をしていた。
「母さん、父さん…」
青年が呼びかけるも、反応はない。
「おい!このガキまだ息があるぞ!」
「ほっとけ!いずれ死ぬさ」
「そうか・・・・・・。どうやら俺たちも助からなそうだな」
「そのようだなぁ。もう一面火に包まれてる。逃げ場はなしか」
「まあ、あの人のために死ねるなら、それでいいさ」
「そうだな」
「とりあえず外に出よう」
黒い服に身を包んだ二人の男が青年の家を出た。
「誰だったんだ。あれは・・・誰なんだ!」
青年は何かを見ていた。
しかし、彼はもう動くこともできない。
青年のその微かな息でさえ消えかかろうとしていたその時・・・
スーツ姿の一人の女性と二人の男性が青年の前に現れた。
「まだ息があります!救助します!」
女性が青年を抱きかかえる。
「ここ一体は被害が大きすぎる!ただちに応援を要請する!」
一人の男性が張り詰めた声で叫ぶ。
青年は残された力で小さく目を開いた。
そこには、なぜか驚いた表情を浮かべ青年を見ているもう一人の男性が映っていた。
「色・・・?」
その男性はつぶやく。
しかし、その意味を考える間もなく青年は気を失った。
―――――――――――――――
「ここはどこですか?」
青年が目を覚ました。
「病院ですよ」
青年を救助してくれた女性がそばにいた。
「よかったです。もう目覚めないかと思いましたよ」
「先生を呼んできますね」
そう言って女性は病室から出た。
青年は自分の体が包帯で巻かれているのに気が付いた。
全身やけどを覆ったみたいだった。
「いてえ・・・」
それと同時に激しい痛みが青年を襲う。
よく生きていたものだなと彼は思った。
しばらくして、女性が治療してくれた先生を連れて戻ってきた。
「おお、目を覚ましましたかい」
先生はうれしそうな表情を浮かべた。
「この人がずっとそばにいてくれたからじゃのう!」
先生は女性を指さしながら笑った。
「いいえ、桜井先生のおかげですよ」
女性も笑っている。
しかし、青年は笑えるはずもなくポカンとしていた。
「ところで、きみ。名前は」
桜井先生が青年に尋ねる。
「
「そうか・・・。有馬優希くん。どうせ伝えなければいけないことだから、今伝えるよ」
桜井先生は悲しそうな表情を浮かべて有馬に言った。
「きみのご両親は亡くなってしまった」
わかっていた。最後に見たとき、そんな気がしていた。
有馬の頬に大粒の涙が流れて止まらなかった。
一度受け入れた現実をもう一度強くたたきつけられた感覚だった。
しばらくの間、有馬は病室で一人になった。
有馬の心はぐちゃぐちゃで落ち着くまで時間が必要だった。
「俺はこれからどうすればいいんだ」
有馬は声を漏らす。
「きみはうちで引き取ることが決まったよ」
一人の男性が病室に入ってきた。
救助の時に応援を要請していた人だと有馬はすぐに気が付いた。
「うちって…?」
有馬は少し戸惑った表情を浮かべた。
「帝国防衛会だよ」
男性が言った。
「ていこくぼうえいかい??」
有馬には初めて聞く言葉だった。
「なんで僕がそんなところに?」
有馬は尋ねる。
「黒津さんがうちで引き取るって言って聞かないんだ」
男性がそう言うと、もう一人の男性が病室に入ってきた。
すると先ほどまで話していた男性が姿勢を正して出迎える。
「お疲れ様です!」
「勝手に決めてすまないな」
黒津と呼ばれる男性が有馬に話しかける。
有馬は気づいた。
救助されたとき驚いた表情をしていた男性だった。
改めて見るとかなり大きい体をしていた。
そんなことを考えていると、続けて男性が話し始めた。
「きみには我々の隊員になってもらう」
突然のことに有馬は混乱した。
「隊員??」
色々聞きたいことだらけだったが、頭がパンクして言葉を発することができなかった。
「しかし、これはきみの人生の最大の分岐点になるだろう。いやなら無理にとは言わない。しっかり考えてくれ」
男性が続ける。
有馬は混乱しながらも、一つずつ質問していくことに決めた。
「まず、帝国防衛会って何なんですか?」
「それはこの男から詳しく聞いてくれ」
そう言って、黒津と呼ばれる男性は病室を後にした。
帝国防衛会 @nishiyamakenzan
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