甘えでしょ？

私はこの言葉が嫌い

　『それってあなたの甘えなんじゃないの？』

　恵まれた人間は私の気持ちを考えずにそんなことを言ってくる。

　何が甘えだ。

　お前らの方がよっぽど甘えて育ってきたじゃないか。私は親に甘えることなんてできなかったのに。

　お前らみたいに甘えて、そして甘やかされて育ってきた人間に、恵まれて幸せだった人間に、私のこの気持ちの何が分かるというのだろうか。

　何も分からないさ。

　だからそんなことが言える。

　私は辛かった。苦しかった。しんどかった。でも誰にも甘えず一人で頑張ってきた。

　だから私も甘えたっていいじゃないか。甘えることの何が悪いんだ。

　私は不幸な人間なんだ。お前らとは違う人間なんだ。だから私は人に甘やかされてもいいんだ。

　なあ、頼むよ。

　私を甘やかさせてくれよ。

　親がくれなかった愛をくれよ。

　なんで？

　なんで私は愛されないの？

　ねえ、なんで？

　…分かってるよ。全部分かってる。何もかも私のせいなんだって。

　私が屑だから。私が気違いだから。私が普通じゃないから。

　そんなの分かってる。じゃなきゃこんなことになってない。

　でも、不公平じゃないか。

　私はずっと不幸で、甘えられなくて、一人で泣いて、ずっと孤独で。

　でもお前らは幸せで、甘えてこれて、みんなと泣いて、孤独なんか感じたことなくて。

　なんで？なんで同じ人間なのに、こんなにも違うの？

　ねえ、なんで？

　私の親が悪かったから？私が悪かったから？世間が悪かったから？

　誰でもいい。なんでもいい。

　だから誰か責任を取ってよ。

　悪かった人の分だけみんなで責任を取ってよ。

　そうじゃないと、私は不幸なままじゃないか。孤独なままじゃないか。救われないじゃないか。

　ねえ、なんで誰も私のことを救ってくれないの？なんで甘えてるなんて突き放すの？ねえ、なんで？

　私は幸せになっちゃダメなの？みんなと笑い合っちゃダメなの？ねえ、答えてよ。

　私、頑張ったんだよ？

　みんなのためにいっぱい努力して、いっぱい泣いて、いっぱい苦しんで。

　それなのになんで誰も私を褒めてくれないの？私を甘やかしてくれないの？

　もういいよって、言ってくれないの？

　ねえ、なんでなの？

　誰でもいいから責任取ってよ。

　私を殺してよ。

　もう嫌だよ。

　もう疲れたよ。

　助けてよ。

　ねえ。

　誰か。

　お願い。

　救って。