第3話
◇◇◇ 神殿型ダンジョン ◇◇ 望月馨 ◇◇◇
楽に終わると思っていた。隣の保険も、使わずに終わると思っていた。
けれど、それは勘違いであると思い知らされた。
メンバーが焦った声で魔物の大群が来ていることを叫ぶ。
今までにこんな事例は無かったはずだ。全階層の魔物が侵攻してくるなど、ダンジョンブレイクの時以外に無かったはずだ。
初めてのダンジョンブレイクでは多くの死傷者が出た。当時はゲートの扱い方について色々な会議がされていた。
国のパワーバランスを崩す恐れがあり、ゲートの所有権に制限をかける必要があると考えられていた。
しかし、世界各国で起こったダンジョンブレイクによって対応を加速させなければならなくなった。
ゲートから魔物が溢れ、無限とも思える魔物が町を襲った。泣き叫ぶ人々、崩れ去る家屋、まるで川のように流れる魔物共。
かくいう僕もダンジョンブレイクの被害者だ。ダンジョンブレイクによって家族を亡くし、全ての魔物を殺し尽くすことを誓ったことを今でも覚えている。
しかし、今では家族にも思える『希望の剣』のメンバーができた。復讐の炎は簡単には消えさらなかったが、復讐のことなどほとんど考えることなど無くなった。
しかし、またしても我が家族をダンジョンブレイクによって亡くそうとしていた。
そんなのは許されない! 絶対に逃げ切ってみせる!
「みんな! 定峰君が殿を務めてくれた! 絶対に逃げ切るぞ!」
「忠邦が!? あの子戦えないでしょ!?」
「僕たちだけでも生き残って欲しいと僕を送り出して来たんだ……」
我ながら良い演技だ。家族を騙すのは憚られるが、皆で生き残るためだ。仕方の無いことなのだ。
「ま、いいや。生き残れただけラッキーだね」
純粋でいてくれて嬉しいよ。誰も僕を疑わない。まぁ、勝君は僕がやったと分かっているだろうが、彼が誰かに話すとは思えない。ま、話しても信じられないだろうしね。
「定峰君の死を無駄にしない為にも、僕たちは生き残らなくちゃならない! みんなも風定峰君に感謝しながら走れ! 絶対に死ぬな!」
予想外なことが起きたが、生き残ることは出来るだろう。このまま協会からお金を貰ってしまえば、もう何も思い残すことは無い。
保険を連れてきておいて良かったよ。本当に。
▼
◇◇◇ 神殿型ダンジョンゲート前 ◇◇ 炎城勝 ◇◇◇
クソ魔物どもなんざに逃げ回ることになるとは思いもしなかったぜ。ダンジョンブレイクなんて別にどうってことねぇだろって思ってたのによぉ。
あの
どうせあの馨が囮にでもしたんだろうな。ま、生き残れただけ儲けもんか。さっさとずらかるとしよう。
─────
プロットもくそもないですが、登場人物には全員それぞれの目標的なやつを設定してあるのでそこまで酷いことにはならないと思います(願望)
スキル無しの無能冒険者、試練に打ち勝ち勝利を掴め 風鈴 @kuma254
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