不思議な挙動の正体は…

不思議な挙動の正体は…

あれは5年前の金曜日でした。

仕事終わりに高校時代の友人達と居酒屋へ行ったのですが、話が尽きず、最終電車で帰ることになったのです。

自宅近くの駅に着いたのは夜0時を過ぎていましたが、ターミナル駅なので、私の他にも沢山の人が歩いていました。

駅を出ると人が散らばっていきます。

駅から自宅マンションまでは約10分。

私の前には40代ぐらいのサラリーマンと、同い年ぐらいの女性が歩いていました。

自意識過剰かもしれませんが、女性が近くを歩いていると安心するなぁと思いました。

そう思ったのも束の間、女性は途中で道を曲がってしまい、後ろに歩いていた人の足音もいつの間にやら無くなっていました。

(心細いな…)

だけど、もうマンションが見えている。

灯りが見えるとホッとしました。

サラリーマンを追うように、足早に家へと真っ直ぐ進んでいくと、

｢アハハハ！｣

笑い声が聞こえてきました。

誰かがマンションの下に居るようです。

近づいていくにつれ、その人物がマンションのエントランスを行ったりきたりし、たまにお辞儀のようなポーズをしたり、反り返ったり…不思議な動きが目につきました。

｢なんか変な人がいる…？｣

早く帰りたいけど、その人物に近づきたくない。

もうマンションに着いてしまう…。

とはいえ、マンションには防犯カメラもある。

何も心配することはない。

大丈夫。

そう思っていると、不思議な動きの正体がわかりました。

(なんだ、この男の人は電話してただけか！)

安心してマンションのエントランスへ入ろうとした際に、男性の真横を通りすぎました。

…！？

エレベーターの閉ボタンを連打します。

何事もなく部屋に戻れて、本当に安心しました。

電話をしていると思っていた男性の手は、ただの握りこぶしだったのですから。