第46話 侵入ルートの確認

 街は四方を険しい山々と深い森に囲まれ、自然の要塞としての役割を果たしている。アッシュたちは、こうした地形を利用して敵に察知されずに街へ潜入するルートを見つけ出すことが、今回の作戦の鍵であると考えていた。フィンが持参した古い地図には、街を囲むかつての鉱山や地下水路の痕跡が描かれており、それらを使って街に忍び込む計画が立てられていた。


「この地図は古いが、我々にはこれしかない。潜入のルートを探り、迅速に行動しよう。」フィンはその言葉で仲間たちに活を入れる。


 アッシュたちは、街の南側に位置する小さな洞窟を目指し、そこから地下水路に繋がる隠密なルートを確認するため、慎重に進んだ。周囲の風景に溶け込むような足取りで行動し、洞窟の入り口が見えてきたとき、全員が立ち止まった。苔むした石壁が洞窟の存在を隠しており、自然に覆われたその姿は、長い間人の手が入っていないことを物語っていた。



「ここか…」フィンがつぶやき、アッシュたちは一斉に注意を集中させた。洞窟の中は暗く、冷たい空気が彼らの周囲に漂っている。アッシュたちはランタンを灯し、慎重に洞窟内へと足を踏み入れた。湿気に満ちた内部では、長年の風化により崩れかけた場所もあり、進むたびに小さな石が足元で音を立てた。


「不穏な空気が漂っているな…」フィンが小さく呟く。やがて、彼らは地下水路の入り口にたどり着いたが、そこで予想外の光景が待ち受けていた。地下水路の入り口は、完全に水で満たされていたのだ。通常ならば干上がっているはずの水路が、水位の上昇によって溢れかえり、道を塞いでいた。


「これは…」アッシュは険しい表情を浮かべた。「帝国の魔法使いの仕業だ。水を操る魔法で水位を上げ、我々の侵入を防ぐつもりだろう。」


 フィンもその言葉に驚きを隠せなかったが、同時に納得もした。「敵は我々がこのルートを使うことを予期していたようだ。だが、これで諦めるわけにはいかない。」


 アッシュは冷静に再び地図を広げた。「別のルートを探すしかない。帝国の策略を乗り越え、街に侵入する手段を見つけるんだ。」



 全員がフィンの指示で周囲の偵察を開始し、街の周囲を広範囲に調査することになった。時間が限られているため、アッシュたちは手分けして周囲を探索することにした。エリックは街の西側へと向かい、カナは北側を担当した。フィンはアッシュとともに東側の崖地帯を調査することにした。


 それぞれが周囲の地形や隠れ場所を確認しながら慎重に進むが、確固たる侵入ルートは見つからない。街の周囲を取り囲む地形は、どの方向からも容易に侵入できる場所がなく、彼らの焦りは募っていくばかりだった。



 全員が集まり、それぞれの探索結果を報告しあうも、どれも決定的なルートは見つからなかった。「水没した地下水路が使えない以上、別の方法を考えなければならない。」フィンが冷静に提案を切り出す。


「ではどうする?」エリックが眉をひそめる。


 フィンは再度地図を見つめ、「敵を街内に閉じ込める作戦を提案する。街の周囲を封鎖し、補給路を断つことで兵糧攻めを行う。その後、疲弊した敵を一気に殲滅するんだ。」


 一同がその言葉に耳を傾ける中、アッシュが静かに口を開いた。「それでは、一般市民が巻き添えになる。彼らも街に閉じ込められ、苦しむことになるだろう。」


 アッシュの懸念は、その場に重苦しい沈黙をもたらした。戦術としては有効だが、その代償が大きすぎることは誰もが理解していた。


「市民を守りつつ、敵を制圧する手段を見つける必要がある。」アッシュの言葉は、全員の胸に響いた。



「まずは、状況をしっかりと把握することだ。街の周囲をもう一度確認し、別の潜入ルートや、敵の動向を探ることが必要だ。」フィンは再度地図を見つめ、皆に新たな指示を出した。


 全員が一致団結し、再び周囲の偵察に向かう。今度はより広範囲に、そしてより慎重に、街の周辺を調査することとなる。彼らの決意は固く、必ずや街を取り戻すために最善の手段を見つけるという覚悟が胸に刻まれた。


 街の解放のための戦いは、まだ始まったばかりだ。


あとがき

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