002 作戦会議

「今日は調子がいいなぁ」


私は半年ぶりの活力感じながら、荒れた部屋の掃除をしていた。なんだか今日、私はやる気に満ちている。理由はわからないが、とりあえずモチベーションの塊なのだ。まぁそもそも無気力の理由もわからないので、このやる気も神の気まぐれで与えられたものだろう。1日も経たずに消えてなくなることは目に見えている。


「まずは部屋の掃除。それと洗濯、ゴミ出し。うーん、衣替えも必要かなぁ。時間が過ぎるのがあっという間で老いを感じちゃう。他なにかしないといけないことはあるっけ?」


 指を4つ折ったところで止まってしまう。溜まっていることが多すぎてわからなくなってしまっているのだ。何か大事なことを忘れてる気がする。


「あ!後期の休学届け出さなきゃ!流石に留年したくないし回復するまでは休学かな」


ハッとした表情になって一番大事なことを思い出した私は、とりあえず休学したいという旨をゼミの先生と親に知らせるべく、LINEを開いた。


「うわぁあ」


LINEが200件溜まっていた。怖い。


 ほとんどは親からのLINEである。友達やゼミの教授からLINEがちらほら。現在大学3年生である私は、前期の3週目から全ての授業を休んで、家に引き篭もっていた。その間に私を心配してくれた友人は数人しかいない。元々友達が少ないため仕方ないことだが、少し悲しい気持ちになる。寂しい人生だなぁ。


「お母さん、怒ってる...」


 ベッドに座り、悲しい顔をしながら私はつぶやいた。母が心配ではなく怒っている点について少々落ち込む。親も友人も心配してくれない。その理由はなんとなくわかっている。悪いのは私だ。


 はぁ、とため息をつきながら掃除を再開する。まずは掃除だ。私はやりたくないことをする前に必ず部屋の掃除をする。これは儀式とかルーチンとかじゃなくただの現実逃避だ。何か必要なことをやっている感があって非常に落ち着くのだ。


 「掃除が終わったら、洗濯とゴミ出し、衣替えと...スーパーに食べ物買いに行かないとだ。出る前に久しぶりに化粧しようかな。ポーチどこにおいたっけ〜」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 目が覚めると身体中が痛かった。私はいつの間にか寝落ちていたらしい。いてて、と言いながら立ち上がる。周りを見渡すがやはり洞窟にいた。現実は無常だ。


「なんだか、楽しい夢を見ていた気がする」


 途中、少しネガティブだったような気がするけど気のせいか。でも楽しそうだったな、私。


 目をこすりながら意識を段々と覚醒させていく。

 そして、状況を把握し冷や汗をかいた。あまりにも無防備すぎる。モンスターがいるかもしれない洞窟で安全確認もせずに寝るなんて、バカだ。死んでも文句言えない。いやこの状況にした神様が悪いから文句は言えるか。

 

 キョロキョロして地図を探し、手に持って地図上に赤い点はなく安堵する。


 「昨日、どこまで考えたんだっけ」


 そう、私は状況把握と今後の方針決めをしている途中で寝落ちてしまったのだ。腕を組みながら整理した状況と決めた方針を思い出す。


 まず今持っている道具は



マジックバッグ:容量は不明。入れた物の重さを軽減してくれる。中に入っているものは手で探って取り出すしかない。


水筒:水が多分際限なく出てくる。多分0度から100度まで温度調整できる。温度上げたり水をいっぱい出すと少し疲れる。魔力的なものを吸われてるのかも。


脇差し:切れ味は家にあった包丁くらいな気がする。頑張って銅貨を断ち切ろうとしたけど傷が少しついたくらいだった。


地図:自分から半径幾分かの距離を表示してくれる。赤い点はモンスターがいる位置。どうやら意識すると視線の先にある天井がある場所の地図も表示してくれるらしい。しかし、表示されている範囲は地上のそれと比べてかなり狭い。


コイン:じゃらじゃらと銀貨から銅貨まで入っていた。価値はよくわからない。今のところ使い道はない。



 悪くないのではないかと思う。サバイバルにおいて水が最も大切だとディ〇カバリーチャンネルの頭おかしいおじさんが言っていた気がするし、敵の位置もわかる。武器もある。でも肝心な食べ物がない。生き残るには良質なタンパク源も必要だとあのおじさんは言っていた。でも流石に虫は勘弁してほしい。


 「食べ物をどうにかして確保しないとね。確か今後の方針は...」


 また手を組みがら頑張って思い出す。

 思い出した内容は大体以下のような感じだ


 現状の最終目標は人の生活圏に辿り着くこと。その先の目標はその時にゆっくり考えることにした。目標達成の方法は2種類、自力で見つけるか、他人と接触または尾行して案内してもらうかだ。正直人とどう接したらいいかわからないし、相手からすると迷惑なだけなのでなるべく自力で辿り着きたいのが本音だ。


 喫緊の問題が安全確保と食糧だ。今いる洞窟のいつ入り口からモンスターが入ってくるか分からないし、暗すぎて見えない奥の方が実はモンスターの巣窟だという可能性もある。とりあえずは洞窟の奥を地図を頼りに散策することにした。食糧に関しては難しい。私には戦闘能力がないため、草原に生えている植物を採取しに行くのが一番現実的だと思う。しかし、とはいえ闇落ちリ○ードンが跋扈する地上で食糧採集を何度もできる自信はない。どうすればいいのか。


 ここまでが昨日考えた内容だと思う。


「困った。マジックバッグからご飯出てこないかなぁ」


 不貞腐れた顔でブンブンとマジックバッグを振り回してみるが、もちろん何も出てこない。本当に困った。このままだと3日も持たない。おかずなクラブのおかなりなが世界の果てまでイッテ○で人間は水無しで3日、食糧無しで2週間生き延びれると言っていたのを知っているだろうか。しかし、それはじっとしていた場合だ。食糧なしで満足に動けるのはせいぜい3日ほどだろう。


 あぐらをかいて左右に触れながら打開策がないか考え込む。私は3分で音を上げた。悩んでいても仕方がないのだ。こういう時は慎重に無計画で行動するに限る。


「洞窟の奥を探検するぞー。おー!」


 おー!の部分は声を高めにして小声で言った。テンション高くするの、大事。そこで気づく


「あれ?私の髪の毛真っ白じゃない?」

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