第18話 約束

 *** ***


 黄色いレインコートの女学生が手の平をクティーラに向けるとすさまじい突風が吹き荒れた。


 その風はクティーラの体を横倒しにする程に協力であった。


 永遠はその衝撃でクティーラの肩から落下した。

「バブル!」

 そう唱えると永遠の体は水泡に包まれ、強風を感じ変形しながらもゆっくり宙を降下し地面へと向かった。

 地上に着くと泡は割れて消えて永遠だけがのこった。


 永遠は横たわり痛みから悲痛な叫びをあげるクティーラに向かって声を上げた。

「クティーラ様、海に帰りましょう。クトゥルフ様を復活させるのです」


 クティーラは永遠の指示を受けて体を半分起こし引きずるように海へ向かい始めた。


「ビアーキー」

 そう女学生に言われて、指示を理解したのか永遠へむかって一匹のビアーキーが攻撃を仕掛けてきた。


 ビアーキーが永遠の腕をつかんだその時だった。


「やめろー!!!」

 祐樹がやってきた。

 バックから包丁を取り出しビアーキーに突き立てた。


 ビアーキーは声を上げ絶命した。


「永遠、無事か!!?? 一緒に帰ろう」


「祐樹、えぇ帰りましょう。ルルイエに」

「!!??」

「もうすぐクトゥルフ様が復活なさるのよ。そうしたら人類の時代が終わるの。でも祐樹は特別だからルルイエで歓迎するわ」


 祐樹はここでようやく気が付いた。

 悪役は永遠の方だと。


「祐樹、ルルイエで永遠に暮らしましょう。約束してくれたよね。絶対に離れないって」

「――ッ」


「もう一度、永遠の愛を誓って。」

 そういって一歩、少女は少年に近づいた。


「あの時みたいにキスをして信じさせて」

 そう言ってまた一歩近づいてくる。


 幼いころの思い出がよみがえる。

 幼稚園に入る前からのずっと祐樹は永遠の事が大好きだった。


――たとえ世界を敵になっても永遠の傍から離れない。そう海で誓った。


 祐樹は一歩、永遠に近づいた。

 覚悟を決めて――。


「永遠……俺は――」

 

 その時である。

 永遠の左側の顔を覆っていた包帯がはらりと滑り落ちた。


 そこにはおぞましい半分魚の顔をした怪物が現れたのだ。


「うわあああああああああああ!!!!!」

「祐樹、一緒に行こう!!」


 祐樹は持っていた包丁で永遠をメッタ刺しにした。

 なんども、なんども突き刺した。


 永遠は倒れて動かなくなった。

 絶命したのである。


「し、仕方がなかったんだ。あれは永遠じゃない!! 永遠じゃ……」


 すると音楽が聞こえてきた。

 永遠のポケットからイヤホンの外れたオーディオプレイヤーからラジオ放送が流れているのだ。


 満里奈の歌声がその場に流れる。


 祐樹は全身にかゆみの様なものを覚えた。


「な、なんだよコレ……」


 祐樹は絶望した。

 腕の皮膚が鱗状に変化し、首には水呼吸に適したエラができていた。


 祐樹は目の前が真っ暗になった。





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約束――永遠の愛―― 夢野アニカ @yumeno-a

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