第17話 娘
永遠とクティーラのいる場所目掛けて空飛ぶ女学生が降下してきた。
クティーラはその触手で叩き落そうとするが、すばしっこく避けられ上手くいかない。
「クティーラ様! 魔砲を撃つのです!!」
永遠はクティーラに指示を出した。
クティーラの体の光がピカピカと点灯しながら口に集まってくる。
「撃てぇ!!!」
次の瞬間、光の線が発射された。
クティーラは首を振り回し、光は夜の街を蹂躙した。
光は刃物の様であり、その光線を浴びた建物は次々と切断され、爆発を起こし、崩れ落ちていった。
人々の心は恐怖から狂気へと変貌した。
それは瞬く間にクティーラの糧となった。
糧を得たクティーラはメリメリメリッと音を立て、より一層肥大し50メートルほどになった。
炎上する町の中で人々は逃げまどうだけではなく、こぞってスマホで撮影しインターネットにクティーラの映像をリアルタイムで配信した。
クティーラだけでない、魚面も空飛ぶ爬虫類顔そして黄色い衣の女学生も。
海外の人々は当初半信半疑だった。
しかしインターネット実況でヘリコプターが煌々とした炎で明かりがともった町の空を飛んでカメラ撮影をしている様子と、自身の視聴するTVメディアが放送しだしたニュースの映像がリンクしているのが解ると事実だと認識しだした。
この恐怖が世界共通認識になった。
そしてクティーラの頭のてっぺんが150メートル程になる頃、黄色いレインコートの女学生が手の平を天へ向けた。
*** ***
祐樹は停電した東京タワーの階段を一目散に降りて行いた。
途中、クティーラの放った光線がタワーの上部を切り落としたが、階段は無事でなんとか降る事が出来た。
「永遠、無事でいてくれ……」
クティーラは移動している。
追いかけるのは人間の足では無理である。
停電で明かりの消えた信号により車は進まず乗り捨てられており、また人々はクトゥーラの放つ光線を恐れ逃れるために右往左往走り回っていた。
夜の闇の中、一台のタクシーにはまだ運転手がのっているようすが見て取れた。
トントントン!祐樹はドアを叩いた。
「すいません! 乗せてください!!」
後部座席のドアが開いた。
祐樹は急いで乗り込んだ。
「あのデカい怪物の所まで連れてってください」
「おや、正気かい?」
「
「なるほど、この混乱の中彼女に会いたいと、そういうことかい?」
「はい、急いで」
「分った。シートベルトを着けな!!」
「ありがとう! おじさん――ッ!!?」
バックミラー越しに運転手と目が合った。
中年のおじさんである。
「口閉じてないと舌噛むぜ!」
「――!!」
タクシーは荒々しく発進した。
「一度こういう事してみたかったんだ」
道を逆走したり、歩道を走ったり、そうしてクトゥーラの近くまで祐樹を送り届けた。
「金は要らないぜ。俺は愛とか恋とかそう言うの信じるタチだからな」
運転手は祐樹に親指を立ててグッドサインを送った。
「おじさん、ありがとう!! この恩は忘れないよ!!」
「あぁ、彼女さんによろしくな」
次の瞬間、突風が街を襲った。
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