蛍光

 ある日、夜道を歩いていると電柱の下に緑の蛍光色をした大きな丸いものを見つけました。


(なんだろう?)

 そう思いながらも、早く家に帰りたかった私は、その場を通り過ぎました。


 そうしてしばらくの間歩いていると、ドチュ、ドチュという大きな音が背後から聞こえてきました。

 咄嗟に後ろを振り向くと、そこには先ほど見た緑の蛍光色の大きな丸いものがありました。


(なんで移動しているんだ?)

 そう思って見ていると、突然、それは上にグングンと伸び始めて人のような形に変貌しました。

 そして、ドチュ、ドチュという音をさせながらこちらへ向かって歩き始めてきました。


(ヤバイ、逃げないと)

 

 そう思って私は走り始めました。


 すると後ろからは、ドチュ、ドチュ、ド、ドドドドドドと私を追いかける音が鳴り響きはじめました。



 数分の間走り続けていると、後ろからの方からのドドドドという音は聞こえなくなっていました。


 そして、気づくと自宅にたどり着いていました。



(あれはいったい何だったんだ?)

 

 そうして部屋に入って息を切らせていると、外から、ドーンという音が聞こえてきました。

 

(何だ?)と様子をうかがっていると、再び玄関の方からドーン、ドーンという音が聞こえてきました。


 玄関のドアを叩かれていることを理解した私が、そちらに向かって、おそるおそるドアスコープを覗くと、そこには緑の蛍光色がありました。


 私は驚いて後ろに後ずさりして、部屋の中に逃げ帰りました。

 そうしている間中、ドーン、ドーンという音が鳴り響いていました。



 そして、数十回ほどドアを叩く音が聞こえた後、急に辺りがシーンと静まり返りました。


(終わったのか? なんだったんだ?)


 訳の分からない事態に遭遇して、その日は一睡もできずに夜が明けるのを待ちました。


 

 翌朝、ドアを開けて外を見てみると、そこにはまるで緑色の蛍光塗料をぶちまけたかのような跡がべっとりとついていました。




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カイキバナシ よういち @yoichi-41

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