鏡の呪い
古都礼奈
鏡の呪い
小さな村に住むタケシは、婚約者であるアヤと結婚式の準備を進めていた。
ある夜、アヤの家の物置で古びた鏡を見つけたタケシは、その鏡に奇妙な魅力を感じて手に取った。
鏡に映った自分の姿がぼんやりと変わり始めたとき、突然のめまいがタケシを襲い、彼は意識を失った。
一方、アヤもその夜、同じ鏡に引き寄せられていた。
彼女もまた鏡を見つめていると、自分の姿がタケシの顔に変わっていくのを感じ、意識を失った。
翌朝、タケシは目を覚ました。
しかし、彼が目を開けると見知らぬ部屋にいて、自分の身体が異常に軽く、そして柔らかく感じられた。
鏡の前に立ったタケシは、驚愕の声を上げた。「これが…俺?」
彼の目の前に映っていたのは、美しい花嫁姿のアヤだった。
彼の心臓が激しく鼓動し、現実を理解するのに時間がかかった。
一方、アヤも同じく目を覚まし、タケシの家の一室で自分の姿を確認した。「タケシ?どうして私が…?」
タケシとアヤはそれぞれの家族に説明しようと試みたが、誰も彼らの話を信じなかった。
家族や友人たちは、二人が結婚式の準備でストレスを感じていると考えた。
結婚式の日が近づくにつれ、タケシはアヤとしての役割を演じることを余儀なくされた。
彼はドレスの重みと装飾の複雑さに苦労しながらも、花嫁としての振る舞いを学んでいった。
一方で、アヤはタケシとしての責任を果たすため、男性としての役割をこなすことに奮闘した。
ある夜、タケシとアヤは宿の一室で二人きりの時間を過ごすことになった。
お互いの身体に宿る不思議な感覚に戸惑いながらも、二人は現実を受け入れざるを得なかった。
「アヤ、こんなことが本当に起こるなんて…信じられないよ。」タケシは、アヤの声で語りかけた。
「私も同じよ、タケシ。でも、このままでは私たちは結婚式を迎えなければならない。」アヤはタケシの声で応じた。
「どうすればいいんだろう…」タケシは不安を隠せなかった。
「今はお互いに協力して、最善を尽くすしかないわ。」アヤはタケシの手を握りしめた。
その温かさが、彼らに一瞬の安心感を与えた。
タケシとアヤは、言葉では表せないほどの混乱と不安に包まれながらも、お互いを支え合うことを誓った。
そして、その夜、二人は一緒にベッドに入り、互いの温もりを感じながら抱き合った。
「タケシ、あなたがそばにいてくれて本当に良かった。」アヤはタケシの声でささやいた。
「アヤ、君がいなければ俺はどうなっていたか…ありがとう。」タケシもまた、アヤの声で応えた。
二人はそのまま静かに抱き合い、今後の困難に立ち向かうための力を得た。
その夜の抱擁は、彼らの絆をより一層深めるものとなった。
ついに結婚式の日がやってきた。
タケシはアヤのドレスを身にまとい、ヴェールをかぶった。
彼の心は不安と恐怖でいっぱいだったが、アヤの家族の期待に応えるため、彼は勇気を振り絞った。
タケシの姿になったアヤもまた、タケシの役割を果たすために緊張していた。
彼女はタキシードを身にまとい、教会で花嫁を待つ。
結婚式が進む中、タケシとアヤは互いの存在を感じ取った。
ヴェール越しに見えるタケシの姿に、タケシの心は乱れた。
しかし、彼は式を中断するわけにはいかなかった。
誓いの言葉を交わす瞬間が訪れ、タケシは震える声で誓いを立てた。
「私は…アヤとして、あなたと共に…。」
タケシの姿をしたアヤも、同じように誓いを立てた。
その瞬間、二人の魂は再び鏡の呪いに引き寄せられた。
だが、元の姿に戻ることはなかった。
彼らはお互いの身体で生きることを受け入れるしかなかった。
タケシとアヤは、元の姿に戻る方法を探し続けたが、呪いは解けなかった。
彼らは新しい生活を受け入れ、互いの身体で生きることを学び始めた。
村の人々も次第にその変化を知らないまま、二人の絆を祝福した。
鏡の呪い 古都礼奈 @Kotokoto21
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