第2話 付喪神(仮)

 落ち着こう。困ったらまずは物事をひとつずつバラバラにしてから順番に考えてみよう、ってプログラミングの授業のときに言われたもんね。


 えーっと。わたしはきもちわるい……じゃなかった、とっても素敵なフェルト人形を作りました。最高傑作さいこうけっさくでした。そしたら、その人形がしゃべりました。おしまい。おっけー寝よう。


「おぬしはさっきから、表情がぐにゃんぐにゃん変わっておもしろいのう。とりあえず寝るのじゃな? よいよい。ではあらためて、おやすみなのじゃ」


「うん、おやすみなのじゃ……ってそうじゃないでしょ!!」


 いやいやいや、おかしいじゃん。おかしいとこしかないじゃん。思わず大きな声でつっこんじゃったよ、人形に!


「ミチカー? もう十時過ぎよ? 早く寝なさーい」

「は、はーい」


 やばっ。一階のリビングにいたお母さんにまで声が聞こえちゃったみたい。

 これってあれだよね? つまり私が天才すぎてしゃべるフェルト人形を作ってしまったってことだよね。天才すぎて。どうしよう、もう一回針でプッツンしたらしゃべらなくなるかな? うん、それだ。プッツンして寝よう。


「天才すぎてごめんね。とりあえず、ちょっとキモチワルイかなって思うので、プッツンしますね」


「ま、待て! 意味がわからんのじゃ!」

 

 ん? わからないことなんかあったかしら? なんだかアワアワしている姿がかわいらしくて、プッツンするのがかわいそうになってきちゃったけど、仕方がない。これが天才の宿題というものだ。


「か、悲しそうな顔をしながら、ぐいってつかむでない! 針をこちらに向けるでない! それと宿題じゃのうて宿命じゃ! と、とにかく落ち着くのじゃ!」


 えー、なんかわたしが悪者みたいなんだけど。ほらほら、こわくないですよー。


「ええい、話にならぬ。すまぬが強制的きょうせいてきにいくぞ! この者に一刻いっこくの安らぎを、【夢枕ゆめまくら】」


 なに? いま光った? てあれ? ねむ……あ、やば……ベッド、で、寝……。


「くー……くー……」

「ふー。やっと寝てくれたか。憑依ひょういした直後に術式じゅつしきを使うことになるとは思わなんだ。声などかけるでなかったか。しかし、おもしろい娘であるな。さて、新たなるパートナーよ。ウチらの戦いを始めようではないか。と、その前に。えーと、光るかまぼこ板は……おお、これじゃ。詠唱えいしょうはなんじゃったかな。たしか……あぷりいんすとーる【あやかしバトル夜十時】」


 ――エントリーを確認。個体名、喜多ミチカ。肉体年齢十一歳。肉体健康度S。精神安定性A。頭脳D。想像拡張領域そうぞうかくちょうりょういきSS。条件クリア。続いてあやかしの登録を行います。あやかし名、不明……付喪神つくもがみ亜種あしゅと推定。種別、神(仮)。個体名、未登録。あやかしランクF。条件クリア。ランクC以下のあやかしは予選からの参加になります。また、ランクE以下のあやかしは予選出場前に事前テストを受けていただきます。なお、ランクE以下のあやかしにはフレンド登録機能が付与されます。詳細はアプリのヘルプ画面をご参照ください。

 それでは良きバトルを。

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