第22話 久しぶりの地上へ
八雲さんと千歳ちゃんを救出してから、数日が経った─。
「やっと全員が揃ったと……」紫苑さんも喜んでいたし私も少しずつ、八咫烏のメンバーと打ち解けていった。
今日は休息の為、「改変はなし」との指示を受け、気になっていた事を聞きに紫苑さんの部屋を訪れていた。
「どうしたんだ?急に聞きたい事って……」
「私の親戚や、友人達はどうしているのかなと……」
ずっと気になってはいたが怒涛の日々に、聞くタイミングを掴めずにいたが、今日思い切って聞いてみた──。
「天音を知っている人達には、もう天音との記憶はない……天音や俺達は最初から生まれてない事になってる……」
「……うまれて、ない………」
友人や親戚達から半年間何の連絡も無い事を考えればなんとなく、予想は出来た……。
本当のところは分からなが、私自身では周りの人達とは良好な関係性だと思っていたし、半日でも返信を忘れたら、凄まじ程のメールの電話をしてくる親友からも連絡は無い……。
「半人半神になった時点で、俺達は世界からは人間としてカウントされず、俺達は生まれてない事になる……だから天音に関わってきた人は天音を『忘れた』んじゃない、『知らない』んだ」
私は絶句した……。
もう人間では無いと、改めてその事実を突きつけられた。
「きつい事を言うが、天音と天音の知り合い達とはもう……生きる世界が違う」
……生きる世界……。
まだ捨てきれてない当たり前に戻りたいと言う夢は叶わないと改めて思い知らされる──。
「……ありがとうございました、部屋に戻ります」
やるせない気持ちを隠し、私は背を向ける。
「天音、俺達は仲間であり友人であり家族だそれを忘れるな」
「はい」
部屋に戻った私は、紫苑さんからの言葉について考えていた──。
私が普段から使っていたスマホを手に取り電源を入れるが、『通知0件』の表示に現実が突き刺さる……。
「天音ちゃーん!お邪魔するわねー!!」
凛子さんの声がしたと思ったら、突然、大きなバッグを抱えた凛子さんが入って来た。
「どうしたんですか?!皆で……」
凛子さんは声で分かったが、凛子さんに続いて桔梗さん、絢華さん、千歳ちゃんが入ってきた。
「これから、女性陣でお出かけしましょう♡」
凛子さんの突然の提案に私は、開いた口が塞がらない……。
「えっと…………」
「突然ごめんね、頭領から天音を気分転換に外に連れ出してやってって言われたの」
桔梗さんから事情を聞き、紫苑さんの優しさに胸が熱くなる。
「それでね!せっかく外に行くんだから!おしゃれしましょう!!」
抱えていた大きなバッグからヘアカラー剤を取り出しニヤリと、笑う──。
「あの……凛子さん?」
「うふふっ天音ちゃんの綺麗な黒髪も素敵だけど……たまにはおしゃれしなきゃね!」
私は、他の皆に助けを求めるが……皆諦めた顔をしていた……。
「……天音さん、残念ですが誰にも凛子さんは止められないのです」
「ごめんね、天音ちゃん」
「ごめんなさい、天音さん」
むしろ皆は私を羽交い締めにしてきた──。
「大丈夫!すっごく可愛くしてあげるから♡」
結局抵抗出来ず、凛子さんのされるがままとなってしまった……。
しかも私だけでなく、千歳ちゃん以外の全員が凛子さんによって髪色を変えられた。
私は黒髪から、茶髪になりインナーに金色が
入った、完成を見た時結構気に入ってしまった……。
桔梗さんは茶髪から淡い紫になり、絢華さんは金髪から黒髪になり、凛子さんは淡いピンクから藍色に、それぞれ髪色変えられた。
「それじゃ!私達入り口で待ってるから早く来てねー!」
嵐のように来た凛子さん達は、嵐のように去っていった。
ここまでしてもらって行かない訳にはいかないと思い、黒服以外に服を持ってない私は、ここに来た時には着ていた制服に着替え。
凛子さん達のもとに向った。
「お待たせしました」
「あら?天音さんそれで行くんですか?」
到着早々、絢華さんに制服の事を聞かれるが私は正直に答えた。
「これしかないくて……」
「なら、天音さんの服買おう……」
「いいね!それがいいわ!!」
千歳ちゃんの提案に皆が賛同し、私は皆の気遣いがとても嬉しかった──。
「天音ちゃん、はいこれ……」
桔梗さんに手渡されたのは、小瓶に入った薬のような液体だった。
「これは?」
「これはね、私達を実体化させてくれる薬よ……普段私達に実体化がないから、正直交代制でしか外出が出来ないだけど……頭領は今日は特別に私達全員分用意してくれたの」
桔梗さんの言葉に、はっとする──。
確かに八咫烏に入ったばかりの時に紫苑さんから外出の許可と薬を貰ったが……その時は気分になれず、ずっと引き出しに仕舞ったままなのを思い出す。
「ありがとうございます」
一気に薬を飲み干す。
「それじゃ!行きましょう!!」
扉を開け、階段を登ると……。
爽やかな風が頬を撫で、眩し過ぎる太陽の光を手で遮る。
半年間地下で過ごし、半年ぶりの外の景色に心が踊るのを感じた──。
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