第19話 暴走

刀を振り続けて、何時間経っただろう……。

身体が悲鳴を上げている。

大型天使からの攻撃を避け反撃するが、傷を負わせたそばから再生していく……。

「はぁはぁ……消滅付与!」

振り下ろされる拳を避け、巨大な腕を登り天使の眼前に迫る──。

「あんたに、構ってる暇無いの!!」

刀を天使の目に突き立てる。

「ガァアア!!」

始めて天使から悲鳴が上がる、私を振り払おうと暴れるが、振り落とされないとしがみつく。

「……炎付与!!」

突き立てた刀に炎を付与し、体内なら天使の身体を焼く……。

「ガァアア!!……ガァア!!」

体内から燃え上がる炎を消そうと、腕を振り回すが体内の炎は更に勢いを増す──。

刀を抜き、距離をとるが……。

「ぐっ……!!!」

振り回す天使の腕を避けきれず引き飛ばされ、何処か家に突っ込んだ……。

「天音ちゃん!!!」

痛みで飛びそうになる意識を繋ぎ止め、何とか立ち上がる……。

「……りんこさ、ん……いって、つ、さん……」

早く2人元に戻らなければ行けないのに……身体が動かない……。

「…ごほっ、ごぼっ!」

息を吸おうとすると血が逆流して、上手く呼吸が出来ない……。

視界が霞んでいく……。

「天音ちゃん!!待っててすぐに治してあげる!」

霞む視界の中に微かに凛子さんが見える……。

「りんこ……さ、ん?」

「喋っちゃ駄目!!」

「てん、しは……?」

「今、一鉄が引き付けてくれてるわ……」

額に汗が滲む凛子さんを見て、戦況は良くない事が分かる……。

「ごめんね……天音ちゃんだけに戦わせて……」

凛子さんの目に涙を浮かぶ、震える手で零れそうな涙を優しく拭う。

「だいじょう、ぶです……2人を守れて、嬉しいです……」

声が上手く出せない中で懸命に凛子さんに伝える……。

「天音ちゃん…………よし!終わったわよ!」

さっきのが嘘のように身体が軽くなる──。

「ありがとうございます!」

「さぁ!一鉄の援護に向かいましょ!」

再び、私達は天使の元へ向かう──。

「譲ちゃん!大丈夫か?!」

「はい!」

所々傷を負いながらも、一鉄さんはいつもように私の頭を撫でる。

大型天使は私から受けた傷もすっかり再生し、以前私達の前に立ち塞がっている……。

刀を強く握り、圧倒的な力で私達の前に立つ天使を睨む。

「行くぜ!!」

一鉄さんの掛け声で一斉に走り出す──。

攻防一体の戦いが続く……圧倒的力の差と驚異の再生能力に私達は、活路に見出だせずにいた……。

「いやあああ!!あなた!!」

「……!!」

外まで響き渡る聞き覚えのある声に、私は一目散に声のした方へ向かう。

「パ、パ……」

最悪の未来が確定した……。

最愛なパパの死を2度も目の当たりにした私は

今だ佇んでいる大型天使に怒りをぶつける。

「あんたのせいで!!!」

怒りに身を任せ、無我夢中で刀を振るう──。

『そう……怒りに身を任せて、黒い炎の灯して……』

頭をの中に、紫苑さんではない『何か』が語りかけてくる。

身体の奥底から力が湧き上がってくるのを感じる。

「……黒炎付与……」

最初に異能使った時に感じた感覚が襲ってくるが、目の前に居る天使を消し去れるならと……私は身を任る。

私は、大型天使に刀を突き立てる──。

「完全消失付与」

大型天使は一瞬で跡形もなく……消えた……。

凛子さんと一鉄さんが何か言いたげに、私を見つめている……。

けれど、そんな事どうでもよかった──。


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