第16話 神の眷属

繁華街から少し離れた、閑静な住宅街──。

目を前に広がる道を私は知っている。

両親と手を繋いで歩いた道、兄さんと喧嘩しながら歩いた道、幼い優里を連れおつかいで歩いた道。

沢山の思い出は懐かしいくも、昨日のように思い出せる……。

「呆けてる場合じゃないぞ!来たぜ……」

一鉄さんの言葉で一気に、現実に引き戻される。

「……あれが、天使……」

真っ白な翼に、兵士のような鎧に身を包み、笑顔の仮面付けた天使は、槍を構える……。

「構えろ!来るぞ!!」

私は、刀を──。

凛子さんは、槍を──。

一鉄さんは、グローブを付け拳を構える──。

どちらも1歩も動かず、お互いに出方を伺う……。

実戦の恐怖から、かすかに切先が震える。

──目の前に居る『敵』を倒さなければ……パパを……家族を救えない……。

家族の笑顔を、自分の願いを思い出し、震えを止める。

「……雷付与……」

刀に雷を纏わせ、天使に向けて一直線に走り出す──。

「譲ちゃん!」

3体の天使が向かってくる……。

3つの槍が交わる瞬間、壁に飛び移る──。

「両断付与」

向かってくる、槍を全て切り落とす──。

「あんた達を……許さない」

3体の天使に刀を通す……。

「ギャアアっ!」と奇声を上げ、天使の胴体が離れる。

「天音ちゃん!大丈夫?!」

後ろから、凛子さんと一鉄さんが駆け寄ってくる。

「はい、大丈夫です」

「良かったーもう!駄目よ1人で行っちゃ!」

『そうだぞ、天音……1人で突っ走るな』

頭の中に紫苑さんの声が響いてくる。

「……分かりました」

「まあ!急く気持ちは分かるさ!」

一鉄さんが、頭をゴツゴツした手で撫でる。

「来たわね」

「はい」

再び、天使が現れる──。

「譲ちゃんにばっかり、手柄取られたら行けねぇな!行くぜ凛子!!」

「そうね、天音ちゃんに良いとこ見せないと♡」

一鉄さんと凛子さんが、天使に向かって行

く──。

息のあった動きに、思わず魅入ってしまう。

『天音!後ろだ!!』

紫苑さんの言葉で、迫り来る槍を間一髪で止める……。

「くっ!重力付与」

自分に重力をかけ、天使を押し返す。

「っ!ぐっ……!」

突然、右肩に鋭い痛みがはしる……。

視界を移すと深々と刺さる槍と、笑顔の天使が見えた、肩から血が溢れ傷口が燃えるように熱い……。

「……っ!消滅付与!!」

前後に居る天使を何とか、斬り伏せる……。

「……がぁ!……っ!!」

肩に刺さる槍を何とか抜くが、経験した事の痛みにその場にうずくまる……。

心臓があるように、傷口が脈打つ。

「天音ちゃん!大丈夫?!?!」

「譲ちゃん!」

凛子さんと一鉄さんの声が聞こえるが、痛みで返事すら出来ない……。

「とりあえず、移動しましょう……また天使に来られたら大変だわ」

「んだな、譲ちゃん……ちょっと我慢してろ」

突然、身体が浮く感覚がしたが、意識を保っていられず……私は意識を失った──。

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