第14話 特訓

部屋に戻り、思ったより身体が疲弊していたようで、ベッドに横になるなり私は早々に寝てしまった……。

目を覚ますと、目の前に……大空が広がっていた──。

「え?!何処!?」

飛び起きると、そこは自分が寝ていた部屋ではなく、花畑を中に居た。

状況が理解出来ず、辺りを見回すとすぐ近くに、まるで宮殿のような建物があった……。

「……行くしか、ないよね」

覚悟を決め、私は歩き出す──。

「す、すごい……」

建物の中は、テレビとかで紹介されそうな、まさに、宮殿そのものだった。

「誰か!居ませんか?!」

宮殿の中にも外にも、人の姿も気配もなく、綺麗なはずの宮殿は何処か不気味に見えた。

夢にしてはあまりにも、現実味があって……。

現実にしては、どこか朧げで……。

私自身、これが夢なのか、現実なのか、それすらもだんだん分からなくなってきた。

「…………」

奥に進むと、1人の少女が呆然と立っていた。

「あの!此処が何処だか分かりますか?」

人を見つけた嬉しさと、帰り方を知っているかもと言う淡い期待を抱き、少女に話しかける。

「……貴女、何処から来たんですか?此処は神の領域です」

私の声で、少女は振り返るが少女は厳しい表情を見せる。

「気づいたら此処に居て、帰り方を知っているなら教えてください、すぐに帰りますから」

「……帰る?……貴女の帰る場所はここ、ですよ……」

少女が、笑う──。

屈託のない笑顔に、私は異様な恐怖を感じる。

「貴女の帰る場所は此処、ずっと貴女は此処に居るんです」

1歩、また1歩、少女が近づいて来る……。

後ずさろうにも、足が動かず、声も出ない……。

少女の手が私に届く瞬間、咄嗟に目を固く閉じる。

「っ!はぁはぁ、はぁ……」

再び目を覚ますと、見知った天井が広がっていた。

「へ、や……?」

汗で張り付いた、ルームウェアが気持ち悪くて部屋に備付けてあるシャワーに入る。

「……さっきのは夢?」

鮮明に浮かんでくる、少女と宮殿。

夢なんてもので片付けられないほど鮮明で生々しく、まるで本当に自分がそこに居るかのような感覚だった……それに夢に出てきた少女から感じた、異様な恐怖を夢で片付けられるほど軽いものでも無かった──。

「そうだ、今日から異能の訓練なんだ…。行かなきゃ」

未だ夢の余韻なのか頭の中もスッキリせず、だるい身体を引きずりながら訓練場へ向かった。

「天音ちゃん、おはよう」

「おはようございます、桔梗さん」

訓練場に行くと、桔梗さんが2丁の銃を手に待っていた。

「今日は、桔梗に相手してもらう、2人共準備してくれ」

紫苑さんの合図で、私と桔梗は対峙する──。

「天音、頭の中で昨日見た刀をイメージしてみろ」

目を閉じ、意識を集中し刀をイメージする……。

手の中に重みを感じ、目を開くと……私の手には刀が握られていた。

「よし、次は異能だ……刀に炎を纏わせてみろ」

紫苑さんの言う通り、頭の中で刀に炎が纏うようにイメージする……。

再び、目を開けるとイメージ通り、刀が炎を纏っていた。

「よし、次は模擬戦だ、桔梗!実戦のようにやれよ」

「はいよ」

「天音、これからやるのは模擬戦だか、実戦だと思え……俺達は半人半神だが、命は1つだ」

「はい」

「それじゃ、始め!!」

紫苑さんの合図で、桔梗さんは躊躇いなく銃の引き金を引く──。

向かってくる銃弾を、刀で切り伏せる。

いくら、異能を持ったからといっても、戦った事のない私には出来る事じゃないのに、意思に反して、身体が勝手に動く……。

「……楽しい……」

何故か、刀を振るう事が……楽しいと感じた。

自然と、口角が上がり、ついには桔梗さんへ直接攻撃を仕掛ける。

「結界!……私の異能は、『結界』よ!」

「……重力付与……」

口までもが勝手に動き、桔梗さんの結界に阻まれた刀をどんどん重くする──。

「くっ……!」

至近距離で、桔梗さんが引き金を引くが、それすらも難なく避ける。

「重力付与」

再び、重力付与をかけるとついに、桔梗さんの結界を切り伏せた──。

「そこまで!!」

「はぁはぁ、はぁー」

「はぁはぁ……」

紫苑さんの合図で、お互い動きを止める。

「天音ちゃん、凄いね!」

すぐに桔梗さんが駆け寄ってきて、褒めてくれたが……。

「いえ、何だか自分が自分じゃない気がしました……」

「もしかすると、初めてだから異能が制御出来ず、暴走気味だったのかもしれないな……まぁ!そのうち、ちゃんと制御出来るようになるさ」

紫苑さんに頭を撫でられ、恥ずかしさのあまり顔を背ける。

「どうした?大丈夫か?」

「な、なんでもありません……」

紫苑さんに顔を覗きこまれるが、さり気なく顔を背ける……。

「なら、いいんだが……とりあえず今日の特訓はここまで!2人共ゆっくり休めよー」

紫苑さんは、手を振りながら訓練場から出ていった。

「凄かったよ、天音ちゃんまた相手してね」

桔梗さんも、私に手を振りながら訓練場を後にした。

最後に残った私は、手に残る感触と拭えない違和感を感じながら訓練場を後にした──。

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