第12話 戦況と紹介

「本当に良いんだな?」

「はい、後悔は沢山はありますが……私は八咫烏に入ります」

紫苑さんから何度も、「良いんだな?」と「後悔はないか?」と確認されるが、私の答えが変わらないと分かると、紫苑さんは覚悟を決めた表情をする。

「分かった、そこまで言うならもう止めない……とりあえず皆んなに紹介するか」

紫苑さんは、ポットからスマホを取り出してどこかに電話をかける。

「水輝、今から全員を会議室に集めてくれ……

理由は来れば分かる!……改変に行ってる?!

じゃあ、居るやつだけでいいから集めろ!」

どうやら、電話の相手は水輝さんらしいが、トラブルがあったのか紫苑さんが声を荒げている。

「悪い、今日2人くらい紹介出来ない奴等が居るんだが、近々紹介出来ると思う」

電話を終えた紫苑さんは、私に申し訳なそうに状況を説明してくれた。

「大丈夫です、ありがとうございます」

「それじゃ、行くか」

紫苑さんは、スッと、私に手を差し出す──。

「今日は、あんたが主役だ……よろしくな天音」

始めて紫苑さんに、名前を呼ばれて心臓がキュッと締め付けられ、恥ずかしさと嬉しさで、躊躇いながらも私は紫苑さんの手を取った──。

紫苑さんに手を引かれながら、着いたのは最初に連れて来れた部屋だった。

「6人か……全くあいつらは……よく聞けよお前ら!今日から正式に八咫烏のメンバーになった天音だ」

紫苑さんが目で、「挨拶しろ」と合図を送ってくる。

私は、深呼吸をして1歩前に出る──。

「神楽天音です!よろしくお願いします!!」

勢いよくお辞儀した事で、首に痛みが走るが、

すぐに痛みが引き何事もなかったかのように身体を起こす。

「嬢ちゃん!そんなに勢い余ったら、すっ転んじまうぞ!」

白い髪の大柄のおじさん?おじいちゃん?にガハハと笑われ、恥ずかしさのあまり顔を伏せる……。

「静かにしろーお前達、1人ずつ紹介してたら長いから、俺が一気に紹介するぞー」

「は、はい!」

紫苑さんの言葉で、顔を上げ並んでいる皆の顔がを見る。

「左から、水輝、桔梗、煌……この3人とは面識があるだろ、次に筋肉ムキムキのジジィが一鉄」

「よろしくな!譲ちゃん!!」

「次に、生意気そうなのが絢華だ」

「ふんっ!私は貴方を仲間とは認めてませんわ!」

綺麗なストレートの金髪をなびかせ、私を睨む。

「最後に、オカマの凛子さんだ」

「こんな可愛い子が入ってくれて!嬉しいわー!!よろしくね♡」

黒い服にレースをあしらい、淡いピンクの髪を振り乱しながら私に手を振ってくれた。

個性が強いと思ってはいたが、強すぎる個性の皆に私は唖然としてしまう……。

「ちなみに、凛子さんだけは怒らせるなよ……」

紫苑さんが耳打ちしてきた言葉に、困惑する。

「紫苑ちゃーん?何か言ったかしらー?」

いつの間にか、凛子さんは紫苑さんの後ろに居て、さっきの言葉が聞こえたらしい……。

「い、いや!別に……」

「うふふっ、紫苑ちゃん私ね……地獄耳なのよ♡」

凛子さんは、紫苑さんの顔を鷲掴みにすると紫苑さんから聞いた事のない絶叫が響いた──。

「いだいっ!!凛子さん!ごめん!!謝るから!!!」

目の前の光景を見て、私は凛子さんは怒らせてはいけないと、密かに誓った……。

「ひ、酷い目にあった……」

あの後、何とか凛子さんをなだめ、無事?に紹介も終わり他の皆は解散したが、私と紫苑さんだけが会議室に残った。

「さてと、天音には改めて戦況を説明しておく」

「はい、よろしくお願いします」

「昨日も、説明した通り……俺達は人間じゃない、概念とか言ったけど正確には半人半神って感じだ身体に八咫烏を宿す事で時空を渡る力と異能を手に入れる」

紫苑さんは身振り手振りで、説明してくれたが……正直、全く分からない……。

「紫苑さん、異能って皆同じなんですか?」

「いや、異能は俺達1人1人に必要な異能を八咫烏が授けてくれるから1人1人違う……天音も見たと思うが煌の異能は『ドール使い』人形を操る事が出来る、明日、天音に八咫烏を宿す……そうすれば天音にも異能が使えるようになる訳だ」

説明の中で、過去や未来を改変する事が目的だと言う事は分かったが、異能の必要性を感じず私は首を傾げる。

「何故、異能が必要なんですか?」

「……この世界には、悪い神様と良い神様が居る、良い神様は人間達を寿命までちゃんと生きさせようとしてくれている、けど悪い神様は自分が欲しいと思った人間を取って行っちまうんだ……」

「つまり、最終目的はその悪い神様をやっつけるって事ですか?」

どんどんと大きくなる話に、必死に頭の中で情報を整理し話についていく。

「まぁ、そうだな……時空を渡り過去や未来の世界に入ると、悪い神様が俺達を排除しようと眷属達をけしかけてくる、その眷属達を倒して改変して行けばいずれ、悪い神様が御出でになるって事だ」

一気に、情報を入れた私の頭は、処理しきれない情報量にオーバーヒートし頭痛がし始めた……。

「一気に、理解するのは難しいだろうから今日は情報を整理して、自分の中に落とし込め」

紫苑さんの言う通り、私には色々整理する時間必要なので、早々に部屋に戻らせてもらう事にした──。

「分かりました」

「それと、部屋はあのまま使ってくれていいからな」

「ありがとうございます、改めてよろしくお願いします……頭領」

「今まで通り、紫苑でいいぜ……よろしくな天音──」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る