第6話 秘密結社『八咫烏』

「なるほどな……お前、なかなか苦労してんだな……」

男は私の話を聞き、同情の顔を見せる。

「……同情はいらない……一応、助けてくれてありがとう……」

「いやいや!さっき、運悪くって言ってたじゃん!」

「……そう、貴方のせいで失敗はした……でも、助けてもらったのならお礼は言いなさいってママに言われてきたから……」

「そうか、良いお母さんだな……」

「……うん……」

突然男が、私を見ながら、顎に手を添え何かを考え始める。

「……鍛えればいけるか……いや、まずは適性があるかだな……」

ブツブツと、言い始めたと思ったら、男は突然私の肩を掴んだ。

「あんたは、名前は?」

「え?名前?」

「俺は、橘紫苑……紫苑でいいぜ」

名乗ったかと思えば、強引に私の手を掴み、腕を上下にブンブンと、振られる。

「はぁ……私は、神楽天音です……」

「へぇー」

ニヤっと笑う紫苑さんに、不気味さを覚えた私は背を向ける。

「それでは、私はこれで……」

大股で1歩踏み出す、一刻も早くこの場を離れたかった……。

「なぁ、あんたの家族を取り戻したとは思わないか?」

「え?……」

突然の言葉に、私は足を止めて、振り返る。

「俺なら……俺達ならあんたの家族を取り戻す手伝いが出来る……一緒に来い!一緒に取り戻そぜ」

不気味な笑顔で、手を差し伸べる紫苑さんに、躊躇いながら……私は紫苑さんの手を取った。

仮に騙されて、殺されたとしても1度は捨てようと思った命など惜しくはなかった……。

「早速行くか!」

紫苑さんは、徐に私をお姫様抱っこし、飛び上がった──。

「し、紫苑さん!!」

「静かにしてろ、舌噛むぞ……」

紫苑さんは、ビルからビルへと飛び、全身黒い服に黒髪の紫苑さんの姿は……まるで、大きなカラスに見えた。

「ほら、着いたぞ」

「ここは……」

到着した場所は、廃れた廃ホテルだった……。

紫苑さんは、私を抱えたまま中へ入り、地下へ降りる──。

しばらく進むと、周りの風景にはそぐわない西洋の屋敷のような大きな扉が姿を現した──。

「あの、ここは?」

「まあ、待て……帰ったぞー!」

中には、紫苑さんと同じように全身黒服を着た、数人の男女が居た。

紫苑さんは、中央に私を降ろし、校長先生が座るような椅子に腰掛ける。

「ようこそ、秘密結社『八咫烏』へ!あんたを歓迎するよ──」

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