第4話 さらなる悲劇

パパを亡くして、約3ヶ月が経った……。

急死の原因は、心不全による突然死だった……。

「詳しく原因を知りたいなら、司法解剖を……」と、医師に言われたが私達は口を揃えて……「このまま、連れて帰ります」と答えた。

大切な誰かを失っても世界は残酷で、心に空いた大きな穴を塞ぐ時間すらもくれない……。

涙で枕を濡らす日々が続いても、いつも通り今日を終え、明日を迎える……。

3ヶ月経っても、私達はただ漠然と日々を過ごしていた…。。

「天音、明日学校行くんでしょ?」

「……うん」

明日は休日だと言うのに、私は学校に用事があり、たった数十分の為に登校しなければいけない事に億劫さを感じていた。

「ママ達天音を送った後、買い物に行ってくるね──」

「分かった、気をつけてね!」

「大丈夫だ、俺も優里も居るからな!」

兄さんは、私の頭を優しく撫でた──。

あの日以降、兄さんはパパの代わりになろうとしてくれている。

本来なら、兄さんは大学の近くにアパートを借り、独り暮らしする予定だったが……独り暮らしの予定を辞め家に残る事を選択した。

「お姉ちゃん!遊ぼう!」

優里は、無邪気な笑顔で私の手を引く──。

優里も明るく振る舞い、幼いながら皆んなを元気づけようとしてくれている。

「……遊ぼうか!優里!」

皆んなが、前を向こうと足掻いているのに、私だけが塞ぎ込んでいられないと、ソファーから立ち上がる──。

「……?ママ、何か言った?」

「何でもないよ!大丈夫よ」

「そっか……」

ママの声が聞こえた気がしたが……空耳だったのかと疑問が残りつつも、特にそれ以上追求もしなかった。

翌日、休日ながらいつも通り起きて、いつも通り支度をする。

支度を終え、兄さんの運転で、学校まで送ってもらった。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい、また後でな」

「お姉ちゃん!行ってらっしゃい!」

「行ってらっしゃい、天音……」

家族に見送られ、校舎に入り、いつもは騒がしい廊下が静まり返っている事に違和感と少しばかりの寂しさを感じながら職員室の扉をノックする。

「失礼します」

「おー神楽、悪いな休日なのに……」

中には担任の田中先生しかいなく、私は早速頼まれていた、文化祭の出し物についてまとめたプリントを手渡す。

「……いえ、大丈夫です」

「んーやっぱり、人気は喫茶店かー」

先生は、複雑な表情でプリントを凝視する。

「はい、特にコスプレ喫茶と男装・女装喫茶が同数です」

文化祭のクラスでの出し物について、多数決を取ったら所やはり1度目はやってみたいと、喫茶店が同率1位となった──。

「……分かった……月曜、この2つでもう1回多数決を取ってくれ」

「分かりました」

「しかし、神楽のお父さんが亡くなってもう3ヶ月か……早いな……神楽、お父さんの分までしっかり頑張れよ!」

肩をバシバシと、叩かれる──。

激励のつもりみたいだか、正直痛い……。

「……はい」

『しっかり』『頑張れ』聞き飽きるほど聞いたし、言われずとも分かってる……。

いちいち言われなくても、そんな事は自分達が1番よく分かっているし、前に進もうと足掻いている──。

「それでは、失礼しました」

職員室を出て、校門でママに電話をかける。

「……あれ?繋がらない……」

──続いて、兄さんに電話をかける。

「……駄目だ、繋がらない……」

どちらにも繋がらず、私は仕方なく先生に許可を貰い教室で待たせてもらう事にした。

「……繋がらない……」

1時間待って、再び電話をかけるがやはりどちらにも繋がらない……。

──今まで、こんな事1度もなかった……どちらかに繋がらなくても、2人共繋がらないって事は無かった……。

パパを事があってから日が浅いからか、最悪の事が脳裏をよぎる……兄さん達なら大丈夫だと自分に言い聞かせても1度込み上げた強烈な不安は消える事なく膨らみ続ける──。

その後も私は何度も、何度も、電話かけるが……繋がらない……。

「……!!!」

スマホに着信が入る……ママからだった。

すぐに、応答を押しスマホを耳に当てる──。

「ママ!どうしたの?!何度もかけても……」

『こちらは、神楽天音さんの携帯で、お間違いないですか?』

電話に出るとすぐに、ママをまくし立てるが聞こえてきた声に、一気に緊張がはしる──。

電話口の声は、ママではなく、兄さんでもない男の人の声だった。

「……はい、そうです……あの、母は?」

緊張しながらも答え、相手の返答を待つ……。

『こちら、警察庁の交通安全課の者です、先程ご家族と思われる方が事故にあい……病院に搬送されたました、身元確認の為、搬送先の病院までお越しください』

警察を名乗る人物からの言葉に、私は言葉を失う……。

「……わかり、分かりました……」

嘘でも、本当でも、1度行かなくちゃと思い、泣きながら、先生に事情を話……タクシーを呼んでくれて私はタクシーに乗り込む。

──お願い!間に合って!!──。

あの日、救急車の中と同じように……私はタクシーの中で祈る事しか出来なかった……。



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