番外編 スケベ犬が室内飼いになったワケ
私が子どもの頃、近所に外で飼われている犬がおりました。
もはや不動産屋とは何の関係もない話なのですが、良かったら聞いてください。
令和となった今では、ペットは室内で飼うのが当たり前になりましたが、昔は外で飼われているワンちゃんが結構おりました。
その犬は、近所の小学生から「スケベ犬」と呼ばれていました。
きっと皆さんもご存じだと思うんですけれど、スケベ犬というのは、人間の股間のにおいを嗅ぐことに情熱を燃やしている犬のことです。
当時は日本中どこにでもいたと思います。
うちの近所のスケベ犬は、白い毛並みに黒い目をした雑種の中型犬でした。
そのスケベ犬は長めのチェーンでつながれているせいで、おうちの敷地の外まで自由に歩き回ることができました。だから、そのお宅の前の歩道を歩いたことがある小学生はほぼほぼ股間を襲われていました。
スケベ犬がいるから、多くの女子がその道を歩けませんでした。
でも、子ども同士で遊びに出かけたときなどに、偶然その道を通ることになってしまうと、男子たちが、「ここは俺らが食い止める。女子は行けー!」などといって、自分の股間のにおいをスケベ犬に嗅がせ、そのすきに女子たちが駆け抜けるということをよくやっておりました。
ところがスケベ犬はスケベな上に性格が悪いですから、逃げる女子を追いかけたくなってしまうのです。嫌がらない子の股間より、泣いて嫌がる子の股間のほうを求めて追いかけるのです。なんてひどい犬でしょうか。
ある時、私のクラスメートの男の子と女の子が、そのスケベ犬の前を通ったそうです。
いつものようにスケベ犬は女子に突進しました。でも、男の子は優しくて勇気があったので、スケベ犬を自分の股間に誘導し、寄ってきたところで犬の鼻先を太ももでくいっと挟んだのだそうです。
鼻を挟まれて動けない隙に女子が逃げるのを見て、スケベ犬は激怒しました。がぶり! 男の子のふとももに噛みついたそうです。
そのことはすぐさま親を通じて犬の飼い主に伝わり、それ以来、スケベ犬は室内飼いとなり、町内の治安が少し良くなったのでした。
その後、そのお宅の前を通ると、スケベ犬が窓ガラス越しに恨みのこもった目で小学生を睨んでくるようになりました。間違いなく小学生を逆恨みしている目つきでした。
怖い。
ちなみに噛まれた男の子ですが、怪我はなく、痛くもなかったそうです。でも、しつこかったそうです。
スケベ犬って、いや~ん。
<おわり>
不動産屋の怪談 ゴオルド @hasupalen
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