第14話
「ヒカリ!」
タタミの上で、ヒカリの
まさか、ヒカリは食べられちゃったの!?
「そんな、ウソだろ!? ヒカリ!」
《落ち着け、勇真。これは
ヤモリは敵に
じゃあ、ヒカリはこの
「じゃあヒカリはどこにいるの!?」
《
場所を教えてもらって、急いで部屋の
「ヒカリ……、ぼくだよ」
暗いすき間の奥で、何かが二つ光った。ヒカリの目だ。くりくりの目は、暗い中で
そっと布団をずらすと、ふるふると
「助けに来るのが
これ以上
ソロリ……
ヒカリがゆっくりと出て来て、勇真の手に乗ったので、少しホッとした。しかし、明るいところで見たヒカリの姿に、勇真はショックを受けた。
「ごめん……ごめんね、ヒカリ」
昼ごはんを食べた後に、一度様子を見に帰れば良かった。いや、やっぱり家で留守番させた方が良かったのかもしれない。
ぐるぐると頭の中を
「ごめん……ぼくのせいだ……」
ぼくは、ヒカリの飼い主なのに。ぼくがヒカリを守らないといけなかったのに……。
○ ○ ○
突然一人でじいちゃんの家に戻った勇真を追いかけて、父さんと母さん、じいちゃんも
この辺りにはノラ
「病院に連れて行けないかな?」
「う〜ん、お
ヒカリの元気がないように思えて、勇真は父さんと母さんにそう言ったが、この辺りの動物病院はどこも休みだった。それに、開いていたとしても、ヤモリなどの
「ヤモリの
父さんがなぐさめるように言ったが、勇真の心は軽くならなかった。
ヒカリの色んな感情を教えてくれる長くてカッコよい
そして何より、一度
「一度失われたら、まったく同じものはもう
勇真はもう
ヒカリはあれからずっと、
自宅へ帰っても、ヒカリはじっとしているままだった。
キットに入っていた栄養剤は、カルシウムやビタミンなどの粉末だった。エサにまぶしても食べなかったので、水に
これで元気になって欲しいと、勇真は
○ ○ ○
八月十九日。
ヒカリが生まれて、ちょうど三十日。ヒカリの様子は、帰って来た時からほとんど変わらなかった。
「
勇真は、部屋で飼育ケースをのぞいていた。今日もヒカリの元気はない。いや、日に日に弱っているように見えた。
「ぼくのせいだ……」
《勇真、どんなに気を付けていても、事故や病気は
つぶやいた勇真に、カミサマが声をかけた。
「どんなに気を付けていても?」
《そうじゃ。用心していても
確かに、思わぬ事故や病気で亡くなる人もいる。治りたいと願わないはずはないけれど、みんながみんな、治って元気になれるわけじゃない。
「カミサマ。ヒカリは元気になるよね?」
《……こればかりは、ワシにも分からんよ》
低く返された答えに、勇真は勢いよく顔を上げて、学習机の上の
「どうして? カミサマは神様なのに!?」
《言ったじゃろう? ワシは、学びのサポートをする神様じゃよ。
「そんな……。じゃあ、ぼくはどうしたらいいの? ヒカリのために何ができるか教えてよ……」
勇真が見つめる前で、玉はカタカタと
《例えヒカリが助からなくても、最後までそばにいて見ていてやることじゃ》
「助からなくても!?」
《そうじゃ。それが、ヒカリの生命を預かった勇真の責任じゃ》
勇真の体を、
責任。
カミサマに最初に聞いて、なんてめんどくさいと思った言葉。でも、生き物を飼うと決めたなら、決して
勇真は飼育ケースの中をのぞく。動かなかったヒカリが、少し頭を
じわりと、勇真の目に
「……いやだ。死んじゃいやだよヒカリ」
ぼくのところに来た、一つだけの
「特別なトカゲなんかじゃなくてもいいから、死なないで……お願い……」
勇真の目から、
黒い舌を出して、ペロとヒカリが自分の顔に流れた
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