第11話
「うわ〜、ヒカリおっきくなったねぇ!」
「ホントだ、スゲェ!」
今日、
二人とも、夏休みに入ったばかりのころに一度遊びに来て、生まれて数日のヒカリを見た。飼育ケースの外からのぞいて、「やっぱりヤモリだっんだね」なんて会話をしたが、その時から考えると、ヒカリはとても大きくなっていた。今日も同じように、飼育ケースをのぞいて
「ねえ、それにしても、ヒカリって本当にヤモリなの?」
ドキッとした勇真が答える前に、大翔も大きくうなずいて言う。
「確かになー。なんかゴツゴツしてて、カッコいいけど、知ってるヤモリとは違うよなぁ」
「二人には、ヒカリが普通のヤモリじゃないように見えるの?」
大翔の言葉に重なるようにして
「う〜ん、私の知ってるヤモリって、もっとツルッとしてるんだよね」
「そうそう。こんなにゴツゴツしてるなんて、なんかさ……」
「「ドラゴンの子どもみたいだよね」」
二人の声が重なって、勇真はうれしくて
「二人は、ヒカリがぼくと同じに見えるんだ!」
ヒカリの体はまた変化していた。
今回の変化は、勇真がヤモリのことを本やインターネットで調べるようになったころだった。改めてヒカリの絵を
体のトゲトゲが増え、目と目の間から、太く長くなった
ヤモリというよりは、トカゲ? いや、トカゲというよりは……。
「ドラゴンの子どもみたいだと思ったけど、それを父さんと母さんに言ったら、ヒカリはヤモリにしか見えないって言うんだ」
飼育ケースの中のヒカリを見せて説明したけど、どうやら父さんと母さんには、少し大きめのツルンとしたヤモリにしか見えないらしい。体のトゲトゲも、ウロコも、なんと母さん達には見えていないのだ。
こんなにもカッコいい変化をしたのに! 特別なヤモリ、見えないなんてなんてもったいない!
「カミサマが言うには、世界の不思議を受け入れていて、ヒカリが見せてもいいと思う相手にしか、見えないんじゃないかって」
「世界の不思議って?」
「カミサマって何!?」
○ ○ ○
「スゲェ! 勇真、大当たりじゃんか!」
「ホントだよ! シークレット引き当てるなんて、ガチャやってもなかなかそんなことないよ!」
話を聞き終わった
カミサマ、カミサマ!
やっぱり二人は、ちゃんとぼくの話を聞いて信じてくれたよ!
《そうじゃな。おぬしは友人に
ホッホッとうれしそうにカミサマは
「お
いや、食べられないのにおいしさが分かってたみたいだから、そこは残念でもない? っていうか、なんで分かったんだよっ!?
でも、やっぱり友達って、いいな。
勇真がそう思うと、まるで「そう思うよ」と言うように、ヒカリが
不思議なことを目の前にしても、いつもとまったく変わらない友達は、なんて心強いんだろう。
ふと、勇真は思った。こうやって信じてくれる友達がいても、声を聞いてあげられるのはぼくだけだなんて、カミサマは
望果と大翔の前で、
コップの底に残ったりんごジュースを、ストローでズズズと吸い上げて、望果が言った。
「そういえば、お
「うん、今年も十三日から
勇真の家族は毎年、
「ヒカリは、連れて行こうと思ってるんだ。このケースならそんなに大きくもないし、重くないから」
「お留守番じゃないんだ?」
「うん。なんか、ひとりだけで置いていくの、かわいそうな気がして……」
エサも水分も多めに置いて、ヒカリにちゃんと声かけして行けば
気がつくと、望果がニマニマと笑っていたので、勇真は首を
「何だよ?」
「いや〜、勇真がこんなにヒカリをかわいがるようになるなんて、想像してなかったからね」
「え、なんで?」
大翔も同じように思っていたようで、お
「だって、勇真はオレんちの
「私もそう思ってたよ」
あらためて言われて、勇真は言葉に
親や友達、先生、近所の人。自分と同じ人間は、意識していた。けれど他の生き物が、人間と、自分と同じように、色々なことを感じて生きていると考えたことはなかった。
いや。同じように、“生きている”と、考えたことがなかったのかもしれない。
「人間も動物も、みんな同じ“
少しはずかしいような、照れくさいような気がして、もじもじして言えば、「
「でも、
《ホッ、まさに、まさに!》
二人がニカッと笑い、
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