第6話
「これは多分ヤモリじゃないかな」
「やっぱりそうなんだ」
仕事から帰って来た父さんに見せたのは、飼育ケースの中で動くもの。
飼育ケースの中は、今は割れたタマゴの
“
「ヤモリって、どうやって飼うの」
「それなんだよな。説明書には何が生まれるのか書かれていなかったから、
飼育ケースを近くでのぞいて、ヤモリのくりくりとした目がチロと動くと、母さんは
「ヤモリでもイモリでもいいけど、
「これは自分で調べろってことなのかな」
父さんは、ちょっぴりヒゲの
説明書なのに必要な説明が全部書かれていないなんて、売り物としてどうなんだ。それとも、それを調べるところからが自由研究だとでも言うつもりだろうか。
うへぇ、母さんの「自分で調べてごらんなさい」みたいだな。文字びっしりの紙なんて読みたくないけれど、勇真はもう一回見てみようと、説明書を手に取った。
「あれ?」
持ち上げてみると、四つ折りにされていたはずの説明書の
「父さん、こんなのあったっけ?」
「ん? ああ、こんなところに! 父さんが見落としてたのか、すまんすまん」
そう言って父さんはスマホをかざして、QRコードを読み取り始めた。
でも、そんなことないんじゃないかな。キットが届いて準備をした日、説明書をちゃんと見たけど……、まあ
ねえカミサマ、どういうこと?
心の中でカミサマに問いかけるが、こんな時に限って無反応だ。
そうか、
「やっぱりヤモリみたいだけど、
父さんがスマホを
重要なことは、毎日
そんなに難しくなさそうで良かった。
「ところで、なんていうヤモリなのかな。ヤモリにも種類があるんでしょ?」
スマホで見た説明にも“ヤモリ”としか書いていないので、勇真は聞いてみたが、父さんも首をひねった。
「う〜ん。特に名前は書かれてないんだよな。確か日本にヤモリは十数種いるって聞いたことがあるんだが……。もう少し大きくなったら
《今回の“
父さんの言葉に
まったくカミサマめ。
「あー、うん、じゃあ今度また調べるね。今日はとりあえずこれで部屋に連れて帰るから」
勇真は父さんとの話を打ち切って、飼育ケースを
部屋に
「ねえ、特別なトカゲってどういうこと? これヤモリじゃないの!?」
《ヤモリじゃよ、少なくとも今はな》
「今は? じゃあ成長したら
部屋のあちこちに向かって、キョロキョロしながら
《質問ばっかりじゃなぁ、勇真は》
勇真はムッとして口をゆがめた。
「だって、分からないことばっかりなんだもん」
《そうじゃな。しかし、何がどうなるか分からないからこそ、楽しそうだと思って“
「そ、それはそうだけど……」
《それなら、ほら、まずは観察じゃ》
勇真は、
底に
このトカゲは、本物のヤモリなのかどうかも分からない。分からないことだらけだけど……。
「……この子、ぼくのヤモリなんだな」
《そうじゃな、勇真のところにやって来た、ひとつの
「名前……」
生まれた姿を見てから決めようと思って、前もって考えてはいなかった。でも、ヤモリと目が合って、今ひらめいた。
「光……。“ヒカリ”にする」
その
《良い名前じゃな。ヒカリも気に入ったようじゃぞ》
「そうかな。そうだといいな。ねえ、カミサマ、ヒカリは本当に特別なヤモリなの?」
《そうじゃ》
「何が特別?」
フフフフ、と
《それは勇真しだいじゃな。おっと、そう言えば勇真、観察記録を書かないといけないのではないのかの?》
「あっ! そうだ! 自由研究!」
“
急いで自由帳を引き出しから取ろうとすると、学習机が
《勇真がどこに向いて話したら良いか迷っているようじゃからな、今からワシの体はこれに決めたぞ》
「ええ〜!? カミサマじゃなくて、タマサマじゃん!」
ムッキーッ! とカミサマが声もなく
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