第5話
「あ〜、もう
一学期の終業式の日。教室で担任の先生から配られた
「何が最悪だったんだ?」
「どうせ算数だろ?」
勇真が振り返って聞けば、望果の隣の席の
「いっつも算数の成績悪いよな、望果は」
「うるさいな」
イヒヒと大翔が笑うと、望果がペシリとその
「筆算嫌いなんだよね〜、どこまで計算したのか分からなくなっちゃうんだもん。それに割り算してるのに
「僕は望果の言ってることの方が意味不明だけど」
ぷぅと望果が
「ま、算数以外はまあまあだし、いっか! もう夏休みだもん、一学期のことはポイポイだよ!」
「そんなこと言って、宿題に算数のプリントいっぱい出てたぞー」
「うわあぁ……。もう、なんで夏休みはこんなに宿題が多いのよ……」
元気を出そうとしたのに、大翔が宿題プリントを
楽しい楽しい夏休みであるはずが、山のように宿題を出されるのだから、そんな反応をしたくなるのもよく分かる。先生達はわざと意地悪しているのではないのだろうかと思えるほどだ。
ああ、宿題の心配なんていらない、楽しいばっかりの夏休みなんて、
「宿題と言えばさ、勇真の“
大翔が体を乗り出して聞いてきた。
「いや、まだ。今日あたり生まれるんじゃないかと思ってるんだけど」
「そうなんだ。何が生まれるのかな。ワクワクするな!」
学校で受け取って持って帰った“
今朝、登校する時には、タマゴに変化はなかったけど、学校に行っている間に生まれたりしたらどうしよう! 一応、母さんに時々様子を見るように
「そうそう、その“
「え、そうなの!?」
望果のお兄さんは五歳年上で、今は中学三年生だ。カミサマが言うには、チラシに”
「望果、何が生まれたのか、お兄さんに聞いた!?」
「うん、ヤモリとカメだったらしいよ」
「へえ、そうなんだ……」
ヤモリとカメ。
やっぱり父さんの予想通り、
そりゃあ、自由研究に
「ね、夏休み中に勇真の家に遊びに行ってもいい? 何が生まれたのか見てみたいし」
「あ、オレも行きたい!」
「うん、いいよ。いつ来る?」
望果に続いて、大翔も期待に満ちた顔で言ったので、三人で夏休みに遊ぶ予定を立てた。習い事や家族の予定もあるけれど、やっぱり友達と遊ぶ時間は大事。二学期が始まるまで顔も合わせないなんて、絶対つまらないもんね。
○ ○ ○
「ただいまー!」
昼前に勇真が家に帰って、一番にしたのは、飼育ケースを
タマゴはどうなっているかな?
「おーい、今日は十日目だぞー」
勇真は飼育ケース越しに、タマゴに声をかけた。
《ふむふむ、毎日の声かけ、良い行動じゃな》
「まあ、なんとなくだよ、なんとなく」
カミサマに
父さんと準備をした日から、なんとなく毎日声をかけている勇真だ。説明書に書いてあったからでも、カミサマに言われたからでもない。ただ、自分が生まれる前に声をかけていたと話してくれた父さんと母さんがうれしそうで、そんな話を聞いてしまったらスルーできなくなったのだ。
聞こえてないかもしれないけど。
聞こえてるのかもしれない。
「そろそろ生まれてこいよー」
そう声をかけたところで、一階から母さんの「勇真、ごはんよー」という声が聞こえたので、勇真は返事をして部屋を出た。
だから、タマゴの表面にほんのちょっぴりヒビが入ったことには気付かなかったのだった。
《勇真、”
ブーッ!
「ちょっと勇真、どうしたの!?」
「ゴホッゴホッ。ご、ごめん、すするのに失敗しちゃった」
お昼ごはんのそうめんをすすっていた勇真は、
びっくりしたじゃないか! っていうか、生まれそうなのが分かってたならさっき言っといてよ!
心の中で
もうーっ!
勇真は急いで残りのそうめんをすすって、おかずの肉巻きを一つだけ口に放り込んだ。全部食べてるヒマなんかない。
「
「え? もういいの?」
うなずいて
ドアを開け、自分の部屋に
タオルの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます