第3話
今の声、何だ?
耳を
「……気のせい?」
口にした
《どんなものに育って欲しいか、願いを言うのじゃ!》
「わあっ!」
その声が手の中のタマゴからひびいたのだと気付き、勇真は思わず
「あっ! まずい!」
割れたかと思ったが、どうやら無事だったようで、タマゴはそのまま反動でこちらにコロコロ転がって、勇真の前まで
勇真は首をひねる。生タマゴって確か、机の上で回してもきれいにクルクル回らないんじゃなかったっけ? クルクル回るのはゆでタマゴだったような……。
いや、そもそもタマゴってこんなに真っ
タマゴの形はまん丸ではなく、片方が少し
ところが、勇真の
「立った!?」
《どんなものに育って欲しいか、願いを言うのじゃっ!》
三度目同じ言葉が聞こえた。やっぱり、声はタマゴから聞こえているみたいだ。勇真は
「……タマゴ、生きてるの?」
《ええい! どんなものに育って欲しいか言えというのに、なぜ素直に言わんのじゃ、おぬしはっ!》
「わあ! おもしろい!
勇真は声の言うことを
「何が生まれるのか分からないだけかと思ったら、生まれる前からしゃべれるなんて、すごいタマゴだ!」
《だーっ! 最近の子どもは
「え! なに、急にキレた!?」
勇真はタマゴを持ったまま、
《はあぁぁ〜……。どうやら今年は
深い深いため息と共に、タマゴから低く
「『今年は』って、毎年誰かのところに行ってるの? 去年のチラシには”
《チラシに
それで見た
《ワシは“
当たったと言われて、勇真の気持ちは少し
まあ、確かに
「えーっと、タマゴがしゃべってくれるのは
《……おぬしはなかなか失礼な子どもじゃな。そもそもワシはタマゴではないぞ。“
えっへん、と言わんばかりの言葉だが、いきなり神様と言われても信じられない。第一、神様にも色々あるだろう。勇真は口をとがらせる。
「カミサマって、一体なんの神様?」
《“夏休みの学びの神様”じゃ! えっへん!》
「うわ、本当に“えっへん”って言った……」
《何か言ったか!?》
勇真は急いでブンブンと首をふった。なんだか分からないけど、神様だというのだから
「それで、カミサマ。“夏休みの学びの神様”だって言うなら、夏休みの宿題を手伝ってくれるの?」
もしそうなら、
神様なら、チャチャッと終わっちゃうんじゃない!?
しかし勇真の期待は外れていたようで、カミサマは軽く否定した。
《いいや、そんなことはせんよ》
「え、そうなの?」
《そうじゃ。宿題は自分でやることに意味があるのじゃ。ワシが行うのは学びのサポートじゃな》
ゲェー。
それは母さんがよく言うセリフじゃないか。答えを教えてって言うと、母さんはいつも「まずは自分で調べてみなさい」って言うんだ。自分でやってみることに意味があるんだって。調べても分からなかったら、
勇真は強く顔をしかめた。
《夏休みは小学生にとって、
「ハイハイ、分かりました、カミサマ」
適当に相づちを打ちながら、勇真はタマゴを取り出した時のように、プチプチの
《おぬし、全くマジメに聞いてないな!》
さらに飼育ケースにタマゴを入れる勇真に、カミサマは
「もうすぐ母さんが帰ってくるんだ。だから静かにしててね。タマゴがしゃべったなんて知ったら、母さん
《ふん、ワシの声はおぬしにしか聞こえないから大丈夫じゃ》
「え、そうなの!? 便利だね!」
《……べ、便利……》
全くもって
《もう良いわ。とにかく、片付ける前にこのタマゴから生まれるものが、どんな風に育って欲しいか考えて言ってみるのじゃ》
「どんな風に? それって意味あるの?」
《あるに決まっておるじゃろ。これから生まれるものを飼うのはおぬし。言ってみれば、この
責任。
タマゴから生まれた生き物を観察する宿題をするだけなのに、なんだか急に話が
「何が生まれるのか、聞いたら教えてくれるの?」
《いいや? “
「う〜ん……」
勇真は箱をにらんで考える。
そういえば、カッコいい
「ぼく、強くてカッコいい、
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