第2話
夏休み十日前、児童達が注文していた教材が学校に届いた。注文していた児童に、
「これは
「勇真、今年も飼育キット買ってもらったんだ?」
後ろの席から
「うん、望果は?」
「私は買ってないよ。今年はお母さんとお
「お
聞いたことのない自由研究のテーマで、勇真はイスを引いて後ろを向いた。
「
「……何だそれ?」
「だから、お
望果がぷぅと
「食いしん坊の望果らしい研究だよな!」
望果の
「いいでしょ? お菓子作りは楽しいから
「マジで!?」
食いついた大翔の机の上にも、
「大翔も買ってたんだな。何買ったの?」
「手作りの望遠鏡を作るキットだよ」
「そんなもん作れるの?」
「うん、外側は空き箱とか牛乳パックで出来るらしいんだ。これで星の観察出来たらいいと思ってさ」
勇真は「へぇ~」と
勇真が自分のキットを見ていると、大翔と望遠鏡について話していた望果が、再び後ろから首を
「それで、勇真はまた飼育キットにしたんだ。去年、カブトエビ
「うるさいな。別にぼくのせいで
「じゃあ
「うっ……」
父さんに手伝ってもらって、説明書通りに飼育したけれども育たなかったのだから、断じて自分のせいではない。だからといって、では
「カブトエビさぁ、なかなか
言葉に
「ふ〜ん、そんなもんなんだ?」
「そうそう、そんなもん!」
「なんか、かわいそうだね」
ホッとしてうなずいたのに、望果に思わぬことを言われて、勇真は
「……かわいそうって?」
「だって、生まれてすぐ死んじゃうなんてさ、かわいそうじゃん」
望果がため息混じりにしょんぼりと言うので、勇真は言葉を続けることが出来ずにポカンとした。
「今度はちゃんと育つといいよな……でもこれ、なんの飼育キットなんだ?」
大翔がそう言って、イスを寄せた。望果も机の上に乗り出して、
「“
「何が生まれるか分かんないやつなんだ」
「そんなのあったんだ? 何が生まれるのか、本当に分からないの?」
「うん。でも、このタマゴがヒントだと思うんだよね」
「ニワトリのタマゴに似てるだろ? ぼくの予想では、インコみたいな鳥じゃないかって思うんだ」
「インコ? YouYouTubeで見たことあるけど、確かタマゴから生まれたばっかりって、羽根も生えてなくて
「ええ!? 生まれた時からヒヨコみたいなもんじゃないの?」
教材の申込みをしてから、ずっとそんな
「うん、シワシワの
その言葉は、勇真の胸を
かわいいヒヨコもいいけど、カッコいい
そう考えると、勇真は早くこのタマゴを
家に帰ったらすぐに箱を開けてみよう。夏休み前の父さんの休みに、一緒に準備してもらう予定だったけど、開けて見てみるくらいはいいよね?
○ ○ ○
今日も外はめちゃくちゃ暑い。いつもなら干からびそうだと思いながら、ヘトヘトになって帰るけど、今日の下校中、勇真はワクワクしていた。
家に着くと、持っていた
おっと、クーラーは入れないと、暑くて煮えてしまいそうだ。
手洗いうがいをして、棒付きバニラアイスをくわえて部屋に
改めて、勇真は自由研究の飼育キットを
そして、プチプチの
「これがタマゴだよな」
勇真は説明書を
「本当にタマゴ、入ってるんだよな?」
なんだか
よし、確かめてみよう。
勇真は、くわえたままで垂れそうになっていたバニラアイスを急いで食べ終えると、棒をゴミ箱に投げ捨てた。そして、
キレイだなと思った
《どんなものに育って欲しいか、願いを言うのじゃ》
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