夏休みの自由研究は謎タマゴ 〜カミサマと“いのち”の学び三十日〜
幸まる
第1話
七月に入ったばかりだというのに、連日の真夏日でうんざりだ。
小学四年生の
夏休みまで、あと二週間。ああ、この暑い中まだ登下校で外を歩くのかぁ……と顔をしかめた。
「あー! もう!」
『夏休みの自由研究にピッタリな教材を』
見出しにそう書かれた大きな紙は、夏休みの宿題である“自由研究”のための、オススメ教材を買うことが出来る申込用紙だった。理科や社会、その他色々な教科に関係する教材がたくさん
勇真は、去年もここから選んで一つ
「自由研究かぁ……めんどくさいなぁ」
チラシを頭上に持ち上げ、
夏休みの自由研究。
これ、好きなやついるのかな、と勇真は口をとがらせた。
他の教科でも良いけれど、毎年、一学期に理科や社会で習ったことに関係する内容を、もう少し
でも、学校で勉強する時と違って、調べる内容を自分で考えるのは、とにかく大変だ。
“○○について調べましょう”
“○○について考えたことを書きましょう”
そんな風に、はっきり問題を出された方がずっと楽チンだと思う。
「“自由”って、難しいんだよなぁ」
うん、今年もこのチラシから何か楽しそうな教材を買ってもらおう。勇真はそう決めて、プリント類を拾ってまとめた一番上に、教材のチラシを置いた。
○ ○ ○
「自由研究の教材?
夕ごはんを食べながら、父さんがチラシを片手に持った。たくさんの教材写真を見て、メガネの向こうで目を見開く。
「父さんが小学校の時なんて、こんな便利なもんはなかったぞ」
「父さん、それ、去年も言ってたよ」
「そうだったか?」
「そうだよ」
勇真はじゃがいものチーズ焼きをほおばって言った。このおかずは好きだ。チーズが乗ってると、何でもおいしくなっちゃうから不思議だ。
「去年もこんなチラシを見て教材を買ったわよ。忘れちゃったの? ほら、なんとかっていうエビみたいなやつ、育てようとしてたじゃない」
母さんが麦茶を注ぎながら言うと、父さんは少し
「ああ、そうか! カブトエビか!」
去年はこのチラシの中から、カブトエビの
「そう、それそれ。でも確か
去年のことを思い出して、母さんは顔をしかめた。
去年
「それで、今年は何をテーマにするつもりなんだ?」
「これだよ」
父さんに聞かれ、勇真はイスから
「なになに……“
「うん、去年は
チラシを見るだけでも楽しいから、毎年もらったらあれこれ想像しながら見るけど、去年まで”
「なあに、
「何が生まれるのか、生まれてみないと分からないんだって」
勇真が説明すると、母さんはさっきみたいにまた顔をしかめた。
「何が生まれるのか分からないタマゴなんて、嫌だわ。変な虫でもわいたら困るじゃない。母さん虫は嫌いよ」
「ちゃんとキットに含まれるケースで飼育できるって書いてあったし、ぼくの部屋で育てれば大丈夫だよ。それに、このタマゴの写真、虫のタマゴじゃないと思うけど」
「確かにな」
写真のタマゴは、ニワトリのタマゴと同じような形だ。この写真では大きさは分からないけど、ケースの大きさが
父さんは
「飼育期間は三十日
「そ〜う? もう、私は手伝わないからね、お父さんがアドバイスしてやってよ? ああほら。勇真、他のおかずもちゃんと食べて」
勇真がじゃがいものチーズ焼きばかりほおばっていると、母さんは別のおかずの皿を
う〜ん、魚、苦手なんだよね。肉のおかずなら良かったのに。そう思いつつ、勇真は
「もういいや、ごちそうさま」
結局勇真は魚のおかずを半分以上残して、食事をおしまいにした。
とりあえず、自由研究のテーマは決まって、必要なものはキットで
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