第7話 最初の衝突②
大陸暦1525年9月12日 ユースティア連邦共和国西部 アビドス州キーザ市近郊 連邦空軍基地
空軍基地にサイレンが鳴り響き、パイロット達は大急ぎで乗機へと駆け込む。何せ重爆撃機が複数接近してきているのだ。
「スクランブルだ、急げよ!」
「準備が整った機から上がっていけ!」
整備員が怒鳴る中、次々と戦闘機が滑走路へと移動していく。この基地に配備されているF-3C〈カイト〉戦闘機は、アビドスの航空機メーカー『ネフティス・エアロスペース』が生産する主力戦闘機で、その外見と性能はアメリカのF-4〈ファントムⅡ〉戦闘機に酷似している。
「イシス1、離陸を許可する」
許可を受け、〈カイト〉は次々と空に上がる。第2航空団第2飛行隊を成す12機の〈カイト〉は、早期警戒管制機のレーダーで捉えられた敵機群に向かっていく。
『第2飛行隊の皆、連中は迂闊にもこのキーザに爆撃を仕掛けてきた。諸君らの力を見せつけてやれ!』
早期警戒管制機からの通信に、パイロット達は頷く。直後、1機の〈カイト〉が敵爆撃機の編隊に突撃。空対空ミサイルを放つ。アメリカのB-47〈ストラトジェット〉戦略爆撃機に酷似した重爆撃機は、空対空ミサイルによって主翼をへし折られ、砂漠へと墜ちていく。無論、フランスの〈ミラージュ〉戦闘機に酷似した護衛戦闘機も応戦に入るが、その1機は軽やかな機動で回避し、逆に回り込んで近距離空対空ミサイルで返り討ちにする。
『メーデー、メーデー!被弾した!』
『くそ、ユースにこんな腕利きがいるなんて聞いていないぞ!』
『新入りに遅れるな、行くぞ!』
指揮官が発破をかけ、残る11機も敵編隊に襲い掛かる。敵機の数は重爆撃機が12機に護衛戦闘機が24機の36機と、実にユースティア側の3倍だったが、〈カイト〉の1機は迅速な行動と軽やかな機動で瞬く間に4機を撃墜していた。そうして空軍によってかき乱される中、重爆撃機を狙う目は空にもあった。
「ファイターパイロット達に後れを取るな!SAM、発射!」
命令一過、基地防空隊所属の地対空ミサイルが敵機に向けて一斉に飛翔。次々と撃ち落として行く。まさしく望む形でのカウンターだった。迎撃を担う〈カイト〉の武すぁいたね
・・・
「凄いな…」
地上の陸軍基地で、味方空軍の奮戦を目の当たりにしていた佐々木はそう呟く。隣に立つクロステルマンも同様の様子だった。
「最前線部隊とはいえ、第2飛行隊にこんな腕利きのパイロットがいるとは…しかし、こうも容易くウェスティシアが爆撃機を大量に差し向けてくるなんて…」
「恐らくは早期に降伏した国の飛行場を利用したのでしょう。悩ましい案件が増えましたね」
The Continental Wars 広瀬妟子 @hm80
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