一本紅葉と秋の空
蒼井藤野
一本紅葉と秋の空
真っ赤な夕日にも
この大きな
それが小学生のころ。
そして、大学生になった今でも、日が落ちかける時間帯には、毎日この『一本紅葉』を眺めに来る。もちろん、この美しい光景を
もっと、大きな理由が存在する。
「なによ、また来たの?」
一本紅葉に到着すると、彼女から、いつものように不満げな声をかけられた。
背中まで流れる艶やかな黒髪、この紅葉のように深い
「そりゃあ来ますよ。綺麗だから」
彼女のことも含めて、僕はそう返答したのだけれど、言葉通りに受け取ってくれないらしい。そっぽを向かれた。
「やれやれ、本当に手厳しいね」
僕は大仰に肩を
この演技は
「誰のせいだと思っているの?
「申し訳ないけれど、あの願いは聞けない」
彼女は顔を伏せた。
表情は見えない。
「なら……、なら、ずっと私と一緒に居てよ!」
「それも駄目です」
顔を上げた彼女は、泣きそうになっていた。
「どうして?」
「どうしてって。泣きそうな顔も可愛いからじゃないですか」
彼女は目元を袖で拭って、またそっぽを向いた。
「もう! ……子供のころは、あんなに素直な子だったのに」
「……。少年の僕でも、君の願いは聞きませんよ」
彼女は、成仏するために、一本紅葉の下に埋められた自分の遺体を掘り起こしてほしいらしい。
でも僕は、彼女も
一本紅葉と秋の空 蒼井藤野 @aoi_huji
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